アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

【東京】シュツットガルトバレエ団『オネーギン』

シュツットガルト・バレエ団日本公演『オネーギン』
2018年11月4日 14時 東京文化会館

「オネーギン」/シュツットガルト・バレエ団 2018/NBS公演一覧/NBS日本舞台芸術振興会

主役オネーギンにパリ・オペラ座マチュー・ガニオが客演。

 

これが、「別世界からやってきた」「育ちが良く洗練された」オネーギンという役柄にまさしくはまっていて、終始マチューから目が離せず。

マチューのオネーギンはこれまでに観たことがあるダンサーたちによるものとは明らかに違っていて、冷淡でも嫌な奴でもない。元々は好青年なのに、非常に孤独で悲しみを抱えていて、それゆえ誰にも真に心を開けない、タチアナに対しても、というように見えた。最初のソロのあまりの孤独感と美しさに胸がつぶれそうだった…

 

印象的だったのが、三幕の手紙のパドドゥでマチューが浮かべた笑み。あの笑みをどう受け取るかは人それぞれだと思うのだけど、例えばタチアナをついに自分のものにしたという勝利の笑み、プライドを取り戻したという満足の笑み、とか。後から考えればいくつか思いつくけど、生で観ていたあの時に感じたのは、タチアナに自分の気持ちが届いたと思ったオネーギンの幸せ感。タチアナにしてみたらなんて自分勝手な、という感じだけど、あの時オネーギンは本物の愛を手に入れた、と感じていたのではないか。一瞬の幸せではあったけれども。

 

こちらの記事を読んでマチューのオネーギン像について、そしてその役作りの緻密さ、深さに感銘。

まもなく東京公演の『オネーギン』を、マチュー・ガニオが語る。|パリとバレエとオペラ座と。|Paris|madameFIGARO.jp(フィガロジャポン)

 

思わずマチューが読んだであろうプーシキンのオネーギンのフランス語版を買ってしまった。これを読みながらマチューオネーギンの余韻に浸るのだ。

 

せっかくシュツットガルトの来日公演なのにマチューのことばかりで申し訳ない気もするけど今回はどうにもこうにも、マチュー、であった。急な一時帰国の限られた時間の中でちょうどマチューのオネーギンを観られたこと、本当に幸運だった。