ソ連のバレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフが亡命するまでを描いた映画≪The White Crow≫(邦題『ホワイトクロウ』)。
”白いカラス”とは、はぐれ者、ありえない者。
キーロフバレエ団の一員としてパリを訪れたヌレエフがあの時亡命していなかったらその後のバレエ界は今とは違ってたはず。
若い頃からのあの野心。才能と情熱と、内に抱える暗いもの。
有り余るほどに自信があるのに、それを発揮できない不満と、不自由への恐怖。
人間は本当に多面的で、いろんなことを経験し学び成長していく。
亡命後はパリオペの芸術監督にまでなり多くの全幕作品を残したヌレエフの若い頃がこういう生活だったのかと、彼に影響を与えた人たちや環境など、興味深かった。レニングラードではエルミタージュ美術館に通い、パリではルーヴルへ。絵画や彫刻から、クレイジーホースのショーも楽しんで、貪欲になんでも吸収しようとする様がその後のバレエ創作などにも活きたんだろうな。まわりの人たちは大変だけど。
あと、びっくりしたのがラコットさん!まさかのラファエル・ペルソナズがピエール・ラコット(今も指導されてますよね)役で、あんなにヌレエフの亡命のその場にがっつり関わっていたなんて驚いた。あの場面はドキドキした。
そしてポルーニン。ウクライナ出身でプーチンファンの彼は、同じバレエダンサーでありソ連を捨てることになったヌレエフの映画にどんな思いで出演してたんだろうか。
エンドロールで振付にヨハン・コボーの名前があったような。
舞台がパリとレニングラード(現サンクトペテルブルク)がメインだから、行ったことがある場所がたくさん出てきた。ヌレエフ自身の踊りはほとんど観たことがなくて、映像で見る限りは好みな感じではないのだけど、彼がパリオペに残した作品の数々は私のバレエ鑑賞のベースになっている。ヌレエフなしのパリオペなんてもはや想像できないもんな。