≪Dilili à Paris≫(ディリリとパリの時間旅行)ミシェル・オスロ監督
いい映画!特にちびっこ(その中でもさらに特に女の子)にはこの世界観をぜひ知っていてほしい、と思わせる。そして大人も、大人だからこそこの大事さが痛切に胸に響く。
肌の色、性別、生まれで人間を決めつける愚かさと暴力性。殴る蹴るだけが暴力ではなく、尊厳をふみつけることこそが暴力。その残酷さをこれほど端的に表しつつ、ディリリ(とすべての子供たち)へのEncourageになっているのが素晴らしい。
愚かさへの最大のカウンターは知識と教養、芸術と学問。
ディリリがパリで次々と出会う大人たち(の大半)の豪華で素敵なこと!マリー・キュリーのような研究者、ピカソやロートレックなど画家たち、音楽家、彫刻家、建築家…などなど。そして彼らがディリリにかける言葉がまたあたたかく優しい。そしてそんな彼らにも、マイノリティとしての苦労や、なかなか世間から評価されないことへの心細さ、それが”巨匠”からの言葉で活き返る様子なども描かれる。
新しく誰かと出会うたびに丁寧な物腰でディリリが、
"Je suis heureuse de vous rencontrer." (あなたとお会いできてうれしいです)
とうやうやしく必ず言うので私もマネしたくなってしまった(笑)。こういう”ちゃんとした”ことを身に着ける、そしてそれを教えてくれる大人がいることも大事。相手へのリスペクトをしてこそ自分もリスペクトされるという面もある。
後から気づいたけどオペラ歌手エマ・カルヴェ役の声はナタリー・デセイだったのね!それは素敵なはずだわ。(本物のオペラ歌手)
ジェンダー、社会の多様性など、こういう感覚を持った監督の作品は安心して観られるよねー。オスロ監督からのメッセージ、しかと受け止めた。ディリリたちの台詞、何度も胸に刺さったよ。