アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

Les Traducteurs(9人の翻訳家)

一応多言語を使う者として翻訳家の話となったら観ずにはいられない。

 

映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』公式サイト

 

フランス映画ではおなじみランベール・ウィルソンだけどこういう激しい役で観るの初めてかもしれない。あんなに非道になれるなんて。(役の上での話です)

 

人気シリーズ小説の最新作を世界同時発売するために集められた9人の翻訳家。それぞれの出身国と言語に合わせてキャラが作られているようにも感じたけど、いかにもヨーロッパらしい設定。翻訳家の集まりなので当然のことながら誰もが複数言語を話し、共通語としてフランス語を使う。(残念ながら日本語の翻訳家は入ってない)

 

また逆に、特定の人を蚊帳の外に置くためにあえて別言語を活用する場面もおもしろかった。なるほどそういう風にも多言語というのは使えるのだなと。

でも考えてみたら、世界における日本というのはそういう存在かもな。日本語のみだと世界の潮流の蚊帳の外、みたいな。しかもそのことに気づきさえしない、みたいな。

 

金か、芸術か。

どっちかを選ばなきゃいけないなんてなったら、辛いね。

 

出版社社長のアングストロームは「文学では食っていけない」と経営者となった人で、作品のことも作家のことも、当然翻訳者のことも、まわりの人間のこともなんとも思っていない。金と成功がすべて。

その分、それを失うかもしれないとなった時に人としての脆さが出るのだな。。

 

集められた9人の翻訳へのモチベーションは様々で、作品への愛情から志願した人もいれば作中の人物になりきってる人、収入のために仕方なくやっていたり兼業していたりする人、作家になれずに翻訳家になった人、など。それが軟禁状態にされ、暴力や恫喝があり、追い詰められてく。そしてアレックスの危うさよ!一番若く、一番脆そうに見えて実は、というやつ。

 

そこまでやる!?って場面がいくつもあるんだけど、終盤の展開は意外だった。

結構好きよ、こういうの。

 

Regis Roinsard監督って『Popluraire』(邦題「タイピスト」)撮った人なんだね。あれから7年ぶりに撮ったのが本作とのこと。その間あちこち旅をして、日本にも行ったらしい。そうやってたくさんの人と文化に出会ったことがきっと活きてるんだろう。

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