アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

バレエ・スプリーム online トーク・イベント

ほんとならこの8月に東京で予定されていた「バレエ・スプリーム2020」、残念ながら公演はキャンセルになってしまった代わりに(?)開催されたオンラインでのトーク・イベント。初めての企画だよね。

 

〈バレエ・スプリーム online 〉トーク・イベント/NBS公演一覧/NBS日本舞台芸術振興会

 

それぞれ気になる組み合わせだったけど私は以下3回のチケット買いました。

8/15 ジェルマン・ルーヴェとユーゴ・マルシャン

8/20 スティーヴン・マックレーとマチアス・エイマン

8/22 リュドミラ・パリエロ、マチアス・エイマン、オニール八菜

 

発表された時はジェルマンとユーゴ!!と色めき立った初回分。これは酷かった。。。

まず司会者の人選、2人に投げかける質問の取捨選択、そして通訳。あらためてそれらの重要さを痛感したね。

司会者が個人的感想や質問を日本語で言い、それをフランス語に訳し、ダンサーがフランス語で答え、それを日本語に通訳する。そしてまた司会者が日本語で話し、それをフランス語に訳し、、、となるのでジェルマンとユーゴの待ち時間も長くなるし、60分のおよそ半分は通訳待ちになるし、若い2人のテンポやノリに司会者がついていってないし、肝心の質問も「いまさらそれ!!!?」ってなるようなのばかりで、ほとんど内容覚えてないわ。。。残念すぎた。

初回がそんなだったので次のチケットを買うモチベーションが下がりまくった。

 

次に買ったのがスティーヴンとマチアスの回。これはこの前日のサラ・ラムとスティーヴンの回が司会も通訳も評判が良く、可能なら見逃し配信チケット売ってほしかったくらいだったので。

ティーヴンとマチアスの回はマチアスがフランス語ではなく英語で参加したことで進行もだいぶスムーズだったのだけど、母語がフランス語の人にとっての英語なので、やっぱり母語で思う存分話してほしいなという気持ちにはなった。

とはいえ内容や段取りはずっと改善されていて、ロイヤルとパリオペそれぞれの持ち味や2つのカンパニーに共通するところ、「ロミオとジュリエット」のマクミラン版とヌレエフ版の比較など興味深かったし、やっぱりトップダンサーの皆さんは人柄といい知性といい、さすがだなーと感じた。

 

そして最終回となったのがリュドミラ、マチアス、八菜さんの3人の回。これは事前収録で、通訳のところは字幕になっていて、音声としてはダンサーたちの語りのみに編集されていてとてもよかった。マチアスもフランス語での方がやっぱり話しやすそうだし、同じカンパニーの仲のいい3人が同じ場所に集まっていたこともあり、ダンサー同士の間で質問が出たりと、もともと期待していたトークイベントの理想形に近づいていた気がする。やはり、普段から一緒に仕事をしフランス語で話している3人だからこその雰囲気が感じられてよかったな。 (字幕では全ては訳されていないところもあったけどそれは仕方がない)

 

そしてリュドミラとマチアスが「ジゼル」で一緒に踊った時の、ジゼルが墓の中へと消える場面での2人の舞台上での思い出からの一連の話に感動して泣いてしまった。なんて美しいんだろう…。生の舞台って本当に素晴らしいね。その舞台を観たわけじゃないのに、2人の話から場面が目に浮かんで泣けてしまう。

リュドミラとマチアスが一緒に登山したのをインスタで見てたので、「どっちが誘ったの?」と私も質問をしていたのだけど(笑)、自分の足で歩いて歩いて努力して初めて観られる美しい景色にたどり着くというのが、稽古やリハーサルをたくさん重ねて重ねて本番の舞台があるというのと共通しているという話に、私も山登りするんだけど、なるほどーーーそういう見方ができるのか!となった。私は舞台には立てないけど、登山でのあの達成感や満足感ならちょっとわかる。最近遠ざかってるけどまた山行きたいな。

そして八菜さんのミルタ像にもなるほどーとなった。ミルタも過去にはジゼルと同じように傷ついた経験があり、それゆえにアルブレヒトを許してはいけないと思っていると。皆さん役づくり深い。

 

さらに、パリオペの中では少数派である”外部”を知る3人というのも興味深かった。マチアスはフランス人だけどたしかモロッコで暮らしてたし、リュドミラはアルゼンチン出身、八菜さんはニュージーランド出身(8歳まで日本)。「若い頃からオペラ座知ってた?」というマチアスの質問もよかったし、それぞれがどんな風にオペラ座にたどり着いたのか、向いてないとか学校落ちたりとか様々ありながらも諦めずに挑戦して、今、オペラ座のエトワールやプルミエールになっている。

たとえばユーゴとジェルマンのようにフランス出身でオペラ座バレエ学校で子供の頃から学び”王道”を歩み続けてきたダンサーたちとは、また違った冒険、挑戦をしてきた強さがあるんだろうなと思った。とても興味深い話。

 

このオンライン・イベント、初回の出来からするとどうなるかと思ったけど、回を重ねる毎に改善されてたようで、最終回はとても充実していたと思う。オンライントークイベントで1500円払っている側からするとおのずと期待値も高くなる。ダンサーたち自身による無料のインスタライブなども数々あったし、観る目も厳しくなってた面もある。

ちょっと、ジェルマンとユーゴのはやり直してほしいよね。(2人には悪いけど)

NBSさんの改善力は素晴らしかったけど、最初からもう少し配慮や工夫があってほしかった。

 

通訳の技量もほんと重要だよなー。単にその言語能力だけではなくて、そのジャンルに精通している通訳かどうか、すぐわかるもんね。バレエでいうなら作品名やダンサー、振付家の名前など。それらを含む会話をテンポよく訳せるかどうかで、視聴者の満足度に大きな影響を与える。

だから!適材適所で、素晴らしい通訳さんにはぜひ素晴らしいオファーをしてほしいよね。(待遇面)

 

ダンサーの皆さんの姿を見ると、早く生の舞台が観られるようになりますようにと願わずにはいられない。