アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

ONKLE(わたしの叔父さん)

2月28日をもって休館する恵比寿ガーデンシネマ。最後の1本になるかもしれない。

 

映画『わたしの叔父さん』公式サイト

 

フラレ・ピーダゼン監督のデンマーク映画コペンハーゲンから遠く離れた田舎で農業を営む叔父と姪クリスの暮らし。毎日早起きし、脚が不自由な叔父の着替えを手伝い、食事の準備をし、牛たちの世話をし、トラクターを洗い、たまに叔父とスーパーに買い物に行く。クリスは携帯も持っていない。

 

公式サイトに

父娘のように暮らしてきた叔父と姪。
穏やかな日常に訪れた、小さな波紋。

とあったのだけど、あの暮らしが27歳のクリスにとって”穏やかな日常”だったんだろうか。そうは思わなかったな。

叔父を助け、クリスなしには立ち行かない農家の仕事をこなし、”いい娘”のように見えるけど、内心の苛立ちがちょっとしたところに現れる。

 

全然他人事に思えないのが、自分にも似た苛立ちに経験があり理解できるから。老いた両親に「どうしてこんなこともできないのか」「どうしてこんなことも知らないのか」と反射的に思ってしまうこととか。しかし苛立ちつつも突き放すことはできない。そして苛立った自分に罪悪感を覚えたり。

 

いやーー、日本には、家族の世話や家の仕事のために自分の夢や興味や人生の楽しみを押し殺している”クリス”がたーーくさんいると思う。

 

難しいのは、他人にはその人の幸・不幸をジャッジできないし、本人が自分の選択に納得しているかどうかは外からはわからない。クリスが不幸だとも言えないし、複雑だ。

 

しかし人はやはり誰かと関わることで自分の世界がちょっとずつ広がるわけで、それを欲する気持ちを100%絶つのは難しいよね、人間だから。クリスには世界を広げてくれる人がいる。あのつながりは続いていくのだと思いたい。

 

叔父は若い姪を自分の存在がつなぎとめてしまっていることをどう考えていたのだろう。老いたとき、自分は自分のことをどう考えるだろう。

 

私はクリスには新しい世界に踏み出してほしいとつい思ってしまうけど、あのあとのクリスの人生、どうなっていくのかな。20年後、30年後、50年後を想像してしまうのだよね。あの数年後、ついに念願の大学に入って獣医学を学んでいつか獣医師になっててほしいな。

 

叔父目線かクリス目線かでも思うところは違いそうだけど、いろんなことを考えさせる映画だった。

 

そして恵比寿ガーデンシネマ!!

恵比寿ガーデンシネマ | YEBISU GARDEN CINEMA with UNITED CINEMAS | 映画館

以前近所に住んでいたこともあってずいぶん通った映画館だった。最後になるかと思うとしんみり。戻ってきてね!!

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