アートなしには生きられない

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歌舞伎座 六月大歌舞伎『桜姫東文章』下の巻

四月の上の巻の続き。桜姫東文章の下の巻を観た。

 

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最後そうなるの!?っていうお話だった。

上の巻では仁左衛門さん演じる清玄の、場面を追っていくにつれ変化していく様が見応えあったなあと思った。

そして下の巻では、今度は玉三郎さん演じる桜姫の変化と、変わらず芯にあるもの、そして心理の見せ場の多さに感嘆。

 

重ねて言うがストーリーとしては冷静に考えると「はあ??」ってなるので、そこはとりあえず置いといて、として見ないといけない面はある。時代のせいではあるけど、気分のいいものではない。下の巻でも、簡単に姫を遊女として売る権助とかなんなんだよ(怒)となる。しかしとりあえずそれは横に置いておく。

 

桜姫が遭遇するイベントは壮絶だ。鶴屋南北、全部乗せみたいになってるよ!若い女性が立ち向かうにはおどろおどろすぎるわけだが、それらを経るごとに桜姫は成長し、大人になっていく、のかな。場面場面での桜姫の心理を表現する玉三郎さん、声であったり仕草、表情。明確に伝わってくる。遊女と姫を行き来する内面。自分があの立場だったらどう考えるだろうか。そして判明する、権助が実は親兄弟・家の仇だった。そこでは”姫”の血が勝つんだよね。やはり。そして最後に自分のルーツに立ち返る、みたいな。

 

仁左衛門さんと玉三郎さんのコンビがこの狂言を36年前にやった時はアメリカ公演もあったそうで、イヤホンガイドで思い出話などもされていた。日本的な複雑なお話だと思ったがアメリカ公演での熱いスタンディングオベーションに、普遍的なものなんだと思ったそうだ。伝わるのね。

 

オペラやバレエだと愛が優先される傾向にあると思うのだけど、歌舞伎では家や忠義が優先される。そこに毎度もやもやするのだけど、桜姫ではその点のもやもやは少なかったかな。最後はやっぱり家柄・お姫様が強いんだなとは思ったけど。

 

それにしても濃い演目だった。6月も最終日まで無事公演できますように。

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