是枝監督作品、カンヌ映画祭とソン・ガンホ主演男優賞受賞で話題になったけど、カンヌ前から気になってたのよ。(ほんとよ)
主な登場人物たちの設定や、それぞれの関係の仕方、ストーリーが、あまり他作品で観た記憶がない新鮮さがあって、でもだからと言って自分からかけ離れすぎてて共感できないみたいな遠さではなく、子供と特別接点のない生活をしている私にとってもどこか他人事とならない。なんでだろね。
ソン・ガンホのあのなんとも言えない、ちょっとふざけてるのかまじめなのかよくわからない感じが作品にとても合っている、というか、彼がいたからこうなったのだろうけども。悪気があるようなないような、本気なのか冗談なのか、読み切れないところがいいのではないか。
というか、なんでもくっきりはっきりわかりやすく伝えようなんてのは、映画作品でやらなくてもいいことで。曖昧なまま、よくわからないまま、あとは観客がそれぞれに考えて解釈すればいいのだ。少なくとも私はそういう作品が好きだ。
赤ちゃんをベイビー・ボックスに預ける(捨てる)かどうか、悩まない人はいないだろう。施設で育つより大事に育ててくれる養父母を(違法だろうと)見つける(売る)ことが100%悪と言い切れる人も、まあそんなに多い割合ではないんじゃないか。みんなそれぞれ自分とは違う”誰か”の立場を想像したり、理解しようと試みたり、そういうことに意味や価値があるのだと思う。
主要人物それぞれに傷があり、傷ついてるからこそ他者の傷にも敏感で、思いやれる。そういう人間らしさにぐっときた。
私は邦画が大体苦手なんだが(PLAN75はよかった)、韓国が舞台だと、ヨーロッパほど遠くなく、かといって自国でもなく、ちょうどいい距離感でストーリーに接せるのかもしれない。あと俳優さんたちもいい。