アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

東京シティ・バレエ団『白鳥の湖』〜大いなる愛の讃歌〜

www.tokyocityballet.org

 

1946年に『白鳥の湖』全幕を日本初演した際、舞台美術を手がけたのはエコール・ド・パリの代表画家である藤田嗣治レオナール・フジタ)でした。当時の幕類はもちろん資料も散逸し、長く忘れられていましたが、2018年の東京シティ・バレエ団創立50周年記念公演で、草案に基づく全幕版として蘇りました。

 

パリオペラ座からジェルマン・ルーヴェとオニール八菜が客演。ゲスト目当てでほんとすいません。

いやあ、ジェルマン王子が舞台上にいるとずっとジェルマンばかり追ってしまってね、すいませんねほんとに。それにしても逸材よなあ。。よく見つけ、よく育てた。その教育システムであったりバレエ教師の質であったり、各層での厚みを考える。そしてもちろん、一番は本人の努力の賜物なんだよね。

 

本拠地パリはすでにシーズンオフだし、LA、ソウルでの舞台をこなしてきてからの東京。時期的にも環境的にも最高のパフォーマンスを披露するというのは難しいとは思う。

 

しかしジェルマンの場合それを差し引いても、存在自体の華と美が!!ヌレエフ版のように足先をこれでもかと使う振付ではないのだが、上半身の美しさ、ラインの作り方魅せ方、本当に見事だなあと見入ってしまう。訓練で得たものと、生まれ持ったもの、その見事な仕上がりっぷりに、ああ、抗えない。。。となってしまうのであった。

 

ヌレエフ版の時みたいに超絶難しい振付をこなしながら孤独な王子の物語を紡ぐ、という緊張感みたいなものは感じられなかったけど、ゲストだし、そこまでは深まらないというのはあるのかな。

 

ハナさん、勝手に黒鳥の方が似合うんだろうと思ってたんだけど、意外にも二幕がよかった。これはもしかしたら、パリオペが2人揃って踊る効果なのかもしれない。そして私の側の、『パリオペ』への渇望みたいなものからくるプラス効果かもしれない(笑)

 

二幕がよかっただけに黒鳥では、やや上半身の使い方が気になるというか。元々パリオペらしい踊りのタイプではないと思っているのだがやはりそうかという感じあり。しかし演技や存在感、それらも含めてだからね、全幕の主役って。

 

作品にもよると思うけど外から主役だけ呼んで全幕ものってなかなか難しいと思うのよね。流派の違い、文化の違い、その他いろいろ違いを超えてひとつの作品をみんなで作り上げる。

パリオペの白鳥にザハロワが客演した時の強烈な違和感が忘れられない。だいぶ昔の話。)

 

舞台美術がフジタというのも舞台上の雰囲気をかなり作っていて、重厚感があり、深みがあり、好きだなあれ。

構成やラストも今まで見たことのない版で新鮮だった。曲の使い方も違ったし。ヌレエフ版に慣れ過ぎてて若干違和感もあったけど(笑)

 

終わり方、いいね。美術や演出も美しかった。

 

パリオペを愛でてしまう私なので日本に来てくれて全幕踊ってくれただけで愛でてしまいそうなのだが、来てくれて、呼んでくれてありがとうという気持ちと同時にやはり、本拠地での、本気の(今日が本気じゃなかったという意味ではないが)パフォーマンスを観に行きたい、という思いは募る。募りまくる。

 

いつ行けるだろ。

 

f:id:cocoirodouce:20221129100213j:image