アートなしには生きられない

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TAR(ター)

ケイト・ブランシェット、圧巻。

gaga.ne.jp

 

クラシック音楽界の指揮者というのは、ごく最近までほぼ男性のみで占められていたわけで、その世界のおいてベルリンフィルの首席指揮者になった初の女性(現実にはまだいない)、そのカリスマ性と権力で周りを圧倒している。

 

で、ケイト・ブランシェットの天才指揮者っぷりが本当に見事なんだけど、ストーリーとしては、ターが男性だったらめっちゃよくある話だよね、というのもある。仕事では自分の思うままに振る舞い、若手には出世をちらつかせて搾取し、家族のことは二の次で。

 

もちろんターが女性である(かつレズビアンを公にしていてパートナーは職場にいる)がゆえにその地位に昇り詰めるまでのハードルはそれまでの男性指揮者より高かったはず。それをずば抜けた才能と処世術で乗り越えてきた。

 

その自信が作るオーラ。近くにいたら、そのオーラに圧倒されることだろう。でもその裏には常に張り詰めた神経。天才とは狂人でもあるのだろうか、と思わされる。

 

権力を手にしてもなお傲慢にならずにいられる人、どれくらいいるんだろう。自分の言動を冷静に思い返す、省みる、ということが自分には不要だという自信。というか虚構。

積み上げてきた途方もない努力の上に今があるはずなのに、自信と慢心によりそれがいつの間にか揺らぎ始め、崩れる。怖い。私だったら崩れないように崩れないようにとちまちま考えそうなのに。

 

最後はよくわからなかった。彼女の再出発があの後どんな風になっていくのか、いつかまたクラシック界の最前線に戻ってくるのか、それとも。興味ある。

 

こちらの記事よい。

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