アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

パリ・オペラ座バレエ団来日公演『PLAY』

なんという高揚感!そしてなんと深いメッセージか。

アレクサンダー・エクマンがパリオペのために創った『PLAY』、大人に刺さりまくる作品だった。

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映像では観ていたけど、生は全然違った。しかも今回、最前列で観てしまったのだ!文字通り目の前で、ダンサーたちの筋肉の動きまで肉眼でばっちり見える距離で、心底堪能した。

久しぶりに目の当たりにする生身のダンサーたちの生命力と喜びに溢れた鍛え抜かれた身体。もうその存在がすでに、世界は素晴らしいと思わせるに十分なのだ。

パリオペダンサーらを見ると毎度感じるが、個の濃さ。中身の濃さ。その集団となると、とんでもない重量をもってエネルギーを放つ。

 

前半の生きる喜びに満ちた楽しさも、人生のなんと美しいことか!みたいな感動があるのだけど、後半が、自分の人生と重なってこれがめちゃくちゃ心に刺さる。楽しい時ばかりではないし、人生にはいろんなことが起きて、または起きなくて、落ち込んだり退屈だったり、乗り越える元気が湧かなかったり、何十年も生きていれば色々ある。

だけれども。いや、だからこそ。

 

『PLAY』が自分にこんなにハマると思ってなかったのでうれしい驚きだったんだけど、この作品をこれだけ味わえる、感じられるというのは、自分も大人になったのだなあという感慨もある。

そして、やっぱり私の人生にはこういう楽しみが必要だし、それによって心が満たされ、豊かになり、想像力が増し、共感力も増す。生きて行くとはそういうことだ。単なる時間の経過ではない。

ここしばらく諸事情により自分の楽しみを削っていた面があるのだけど、バレエを観たり、映画を観たり、音楽を聴きに行ったり、美術館に行ったり、そういうことは削り過ぎてはいけないのだ。

 

なーんてことを考えさせるエクマン、さすがです。素晴らしい。天才。音楽もカッコいいし衣装もいい。全部いい。

ありがとうエクマン。ありがとうダンサーの皆さん。

元気出た!!!

 

追記:

今回、公演プログラムの内容もいいですね。衣装のデザイナーや照明デザイナーらのコメントが載ってるの珍しいし、ダンサー全員の名前と顔が載ってるのもいい。

エクマンのコメント公演後に読んだけど、思いはちゃんと作品から伝わったよ!!受け取れててうれしい。


さらに追加。成熟した大人のいる社会で生まれる作品だよなあとも思った。まず大人であることという現実があり、それへの対比や、それを打ち破ること。

 

自分用備忘録として後日追記:

この公演珍しく夫と観に行ったのだけど、シルヴィアが「どこですか?」って客席に話しかけるところで答えたのが夫でして(笑)、美しきシルヴィアから美しすぎるお礼を賜った夫、今年の運を使い果たしたのではないか!?と思うほどの体験であった。出かける前はこんな暑い中面倒だなあ風だった夫に(二度と誘わねえ)と内心イラっとしていたのだけど、『PLAY』はそんな大人の心のささくれを一掃するに十分の素晴らしい作品だった。夫みたいな人こそ楽しめる作品とも言える。もちろんボールにもはしゃぎまくりで。バレエにこだわらず、ダンサー云々でもなく、その場を楽しむことの大事さを実感させてくれる作品。

 

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