アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

パリオペラ座バレエ団シンガポールツアー2019

パリオペをシンガポールで観られる!しかもプログラムも超魅力的!

となると期待値MAXだったのだけど、生の舞台の素晴らしさに言語化が間に合わない。

 

PARIS OPERA BALLET

A triple bill featuring William Forsythe, Jerome Robbins, Crystal Pite

21-23 Jun 2019 Esplanade Theatre

 

Blake WorksⅠフォーサイスパリオペのために2016年に創作した作品。

James Blakeのポップな曲で始まるこれ、フォーサイスパリオペの若いダンサーたちに愛情込めて作ったよ、という雰囲気でダンサーたちも観てるこっちも楽しくならざるを得ない。

クラシックのテクニックで小気味よく踊るダンサーたち。すごっ!ってなるところがあると同時に、バレエのごく基本的なシンプルな動きも多く振付に入っていて、そのシンプルさゆえに引き立つダンサーの身体そのものの美しさ、動き、ラインの美しさに、なんて尊いの。。。と涙。最後、マリオンとジェルマンの2人で終わるのだけど、2人のそのEn hautやtenduをしたその美しさがもう、最後の歌詞"How wonderful you are"と相まって号泣だった。いい作品だーーー。

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ロビンスの In The Night は今回の3作品の中で唯一生で観たことがあった作品。3ペア6人のダンサーがショパンノクターンに乗せて踊るエレガントな作品。演奏はパリオペのピアニスト久山亮子さん。

通常はエトワールが踊る役なので、今回の若いダンサー中心の配役では物足りなさもあった。1組目はパクさんとポール・マルク。パクさんが繊細で優美なパリオペらしい踊りで素敵だった。2組目はレオノールとジェルマンのエトワールペア。3組目はマリオンとオドリックで、これはちょっと厳しかったね。この役にマリオンはまだ若いよね。

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当初発表されていたキャストでは1組目にミリアム、3組目にドロテが配役されていたので、もしそれが実現していたら、とちらっと思ってしまったのだけど、今回エルヴェ・モローがシンガポールに帯同していて(客席から観ていた)、In The Nightの指導はエルヴェによるものだと思うのよね。若いダンサーたちが本番の舞台を踏み、エトワールとして踊ってきたエルヴェがアドバイスをし、という継承が今されているのだなあと考えると、その現場に立ち会ったんだなと思うことにした。(前向き)

 

さて、一番楽しみにしていたクリスタル・パイトのThe Seasons' Canon、圧巻!!!

これは凄い。言葉を失う。自分が感じていることをどう表現していいものやらと、これが思いつかずなかなか書き始められなかった。こんなに心揺さぶられるのなんでだろう!??

パリオペのダンサー54人が作り上げる世界。全員が1つの生き物のようであったり、自然、大地を表しているようであったり、激しさや神聖さ、人間の身体表現がどれほど豊かで可能性が無限にあるか、みたいないろーんなことが、この30分の作品にぎっしり詰まっていてとても消化しきれなかった!パイト天才。

ここでも本拠地パリでキャスティングされていたエトワールやソリストがいなかったわけだけど、この作品においては個の力よりも集団としての力が大きく、作品の魅力は全く失われていなかったのではないか。見比べてないからわからないけど。少なくとも私にはそう思えた。あえて個別に名前を挙げるならパブロ、アンドレア、ナイース(多分)ら若いダンサーの存在感に目がいった。

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パブロはBlake WorksⅠでも目立ってて、あの躊躇いのない思い切りのいいオフバランスとか、キュートな雰囲気とか、とてもいい。ああいう身体の使い方って若さゆえの怖いもの知らずなのか、訓練の賜物なのか、生来のものか。全部かな。ナイースは本当に若いと思うのだけど、落ち着いててクールで存在感あった。

 

若すぎて名前と顔が一致しないダンサー多くてなー。勉強不足反省。

 

結局シンガポールに来たエトワールはレオノールとジェルマンの2人だけ、しかも2人とも若いエトワール、若手中心のグループだったわけだけど、パリオペダンサーという集団のレベルの高さ、フレキシビリティ、魅力が満載だった。もちろん作品の魅力もあったし、プログラムの妙、そしてそれを実現して見せてくれるダンサーたちの力。

”バレエと言えばクラシック”、だけではない現在のバレエ界の最先端、最高峰の1つが観られて本当に幸せだった。