アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

英国ロイヤルバレエ団ミックスプロ in シネマ(2018/2019)

現在来日中の英国ロイヤルバレエ団。だけどあえてライブビューイングへ。

 

プログラムはウィールドン、シェルカウイ、パイトのトリプルビル。

Within the Golden Hour / Medusa / Flight Pattern — Productions — Royal Opera House

 

ウィールドンのWithin the golden hour、初演は2008年サンフランシスコバレエ、今回衣装を新たに初めてロイヤルで上演。ウィールドンがクリムトの絵に影響を受けたと語っていたのも、たしかに、となる。ウィールドンはあまりいいなと思ったことがなかったけどこれは結構楽しめた。ワディムやサラが出てたからかなという気もするけど、音楽も好きだったな。

 

シェルカウイの新作Medusaは短い中で物語の展開が早くもっとじっくり観たいと思わせる。オシポワとマシュー・ボールの後半のデュエットがとても見応えあって引き込まれた。ピュアな巫女、奪われて、怪物になり、そして死に、最後の素に戻る、その演じ分け、オシポワの凄み。


シェルカウイのインタビューで、「力ある者には罰を与えられない代わりに無実の人が罰せられる、現実社会にもあることだ」「自分の選択はなんらかの影響を与えるのだという責任を忘れてはいけない」といったことを話してて、ギリシャ神話をベースにしているのが一気に現代に、身近に感じられる作品だった。期待以上。

 

さて。最後はクリスタル・パイトのFlight Patternパリオペの≪The season’s canon≫を生で観たばかりの私の心はまだ波立っていて、上演前のパイトが創作について語るインタビュー映像で感動してしまった。

 

「今、世界で起きていることを目の前に、何も語らないわけにはいかなかった」

 

これが、今を生きる振付家だよね。パイトの人間性に心打たれた。

作品はテーマが難民なだけに重く暗く心をえぐってくる。パイトとダンサーたちが、取り上げたこのテーマに並々ならぬ思いで臨んでいるのが伝わってくるし、実現したロイヤルもさすがだ。芸術は日常生活や社会と切り離されたものではなく、むしろこれほど密接しているものなのだと、体現して見せている。

好みで言えばパリオペのThe season’s canonの方が好きだけど、パイトが作り上げる世界観にはどこか共通するものがあって、もっともっとパイトを観たくなる。

 

youtu.be

 

ところで、せっかくロイヤルが来日しているのに、どうしてこういうのは上演してくれないのだろう?

私はシンガポールパリオペとロイヤルの来日の時期が重なってパリオペしか観られなくても、ロイヤルがドンキとガラなら全然惜しくなかった。でももしこういう新作だったら、身体が2つ欲しい!!となったはず。

 

来年のパリオペ来日公演にしてもそうだ。「ジゼル」と「オネーギン」になったそうだけど、なんでシンガポールや上海でやるようなプログラムが日本では見られないんだろう。特にThe Season's Canonのような作品は54人のダンサーが必要で抜粋では上演できない作品なんだから、ガラでは無理で、バレエ団としての来日でしか実現できないと思うのに。悲しい。

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