アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

伝統と創造シリーズ vol.12『藪の中』

セルリアンタワー能楽堂にて、伝統と創造シリーズ vol.12『藪の中』初日。

www.ceruleantower-noh.com

 

原作は芥川龍之介の小説『藪の中』。「真相は藪の中」という言い方の”藪の中”はこの作品から来ているのだそうだ。知らなかった。

こちらで紹介されてます↓

能舞台で繰り広げられる、欲望と希望の物語、『藪の中』リハーサルレポート|チャコット

このシリーズ、ずっと気になっていたんだけど未見だった。どんな感じか想像が付かず手掛かりを求めて読んでおいた。

 

能舞台にはそもそも”あの世感”があるので、『藪の中』のストーリーをやるにはぴったりなのかもしれない。通常の能舞台に加え、照明の力も大きい。蛍光灯の白々しい光がガラリと雰囲気を変える。

そしてなにより能面の趣深さをあらためて感じる。演じてるのは同じダンサーなのに、面を付けると別人格が立ち上がるかのよう。

 

ストーリー自体はわりと単純でありがち、それをどう表現するかというのが見せ所。

演者は能楽師の津村禮次郎を含め5人。能狂言的な台詞まわしと、現代的な発声、能楽師の立ち振舞いと、ダンサーの身のこなしが同居する。

 

こういった作品の時に、”台詞による説明”が必要かどうかというのは毎度考えさせられる。本作では一部、樵が状況を説明する。

 

ダンスとしては、終盤の小尻さんのソロがとてもよかった。小尻さんの身体コントロール、好きなのだよなあ。見惚れてしまう。能面を付けているとより自分の身体に集中したりするのだろうか。

 

全体としてみると、好きなところとよくわからないところ、あまり好きじゃないところがあり、いろいろな要素を使っているのである意味当たり前ではあるが、能舞台の雰囲気や能面のフシギな魅力、衣装もよかった。和ものとダンス(バレエ)ではいつも衣装問題があるよね。でも本作はどちらにとっても違和感なく、きれいだった。

森山開次さんら、見たことある方が客席にちらほら。

 

 

原作:芥川龍之介
演出・振付:島地保武
出演:津村禮次郎、酒井はな、小尻健太、東海林靖志、島地保武

衣裳:matohu
音楽:熊地勇太

照明:瀬戸あずさ(balance,inc.DESIGN )
音響:岡直人
舞台監督:川上大二郎

主催/企画制作:セルリアンタワー能楽堂
企画制作:スタジオアーキタンツ