アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

Call Jane(コール・ジェーン)

映画『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』公式サイト

 

1960年代のアメリカ、妊娠の継続によって自分の命が危険にさらされるというのに、病院のお偉方(全員男性)によって中絶する選択肢をあっさりと却下されるジョイ。

 

まだ生まれてもいない胎児の命は重視するのに、いま、目の前にいる生きている女性の命のことはなんだと思っているのかと本当に腹が立つ。現代アメリカでも起きていることで、この時代に戻そうとする勢力の存在が恐ろしい。

 

ジョイはもともと優秀な学生だったのに、弁護士をしている夫との生活では”裕福なハウスワイフ”。能力を活かす場は家庭に限られていたのだよね。そして妊娠したことにより命の危険にさらされる。そして自分以外にも様々な理由で望まない妊娠をし、表立って中絶手術が受けられないために行き詰まる多くの女性たちの存在を知る。

 

『あのこと』(アニー・エルノー原作の小説の映画化)では、妊娠した若い女性が受ける違法で辛い中絶処置を非常に直視させられてかなりきつかった。しかしあれが当時の女性たちの現実だった。L'Événement(あのこと) - アートなしには生きられない

一方『コール・ジェーン』では処置自体は比較的軽く描かれていて、肉体的辛さよりも女性の権利が女性自身から奪われていることへの問題提起と、女性自身が社会や男性に立ち向かうという面が強調されている。そして実際、社会の方が変わったんだよね。とはいえ軽さがちょっと気にはなった。

 

いくつか感想を見たら、全然伝わってないなーっていうのがあって、あの理不尽な扱い、自分のことを自分で決める権利を奪われている憤り、違法であっても他に選択肢がないという追い詰められた状況、などをこの映画を見てもなお想像できない人がいるんだなと、むなしくもなる。男性にとってはどこまでも他人事で、”法は守るべき”が優先されるんだろうか。その結果、女性の人生はどうなると思っているのか。それが運命と受け入れろというのか。そこに一石を投じている映画なのにね。

 

日本の公式で使われてる画像がどうも納得がいかないので海外版貼っとくね。

calljane