アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

Triangle of Sadness(逆転のトライアングル)

gaga.ne.jpTriangle of Sadness

 

パルムドールを獲ったのこれだったのか。『フレンチアルプスで起きたこと』のリューベン・オストルンド 監督作品。

 

ほんとは目を逸らしていたい、できれば気づかないふりでやり過ごしたい、みたいなところを見事にピックアップして映画にするよねオストルンド監督。

”トライアングル”は、大金持ちと頂点とした資本主義社会であったり三角関係であったりサバイバル能力であったり、いろんなところに仕込まれている。

観る前は2時間半は長いなあと思ったけど、心配無用だった。

 

富裕層相手の豪華クルーズのスタッフが、乗船客と直接接するクルーは”グッドルッキング”な白人ばかりで、清掃係は”有色人種”ばかり。これほんと、あるあるなんだよね。特別豪華なとこじゃなくても、ホテルやレストランなどで当たり前のように存在してる。なんなら客側も見た目で座る席を決められるなんて話もあるくらいで。(”グッドルッキング”な客は外から目立つ席へ、アジア人観光客などは奥の目立たない席へ、など。)

 

インフルエンサーでモデルのヤヤのまぶしさよ!クルーズ船にも招待されて乗っている。彼氏でモデルのカールはヤヤの引き立て役でSNS用の撮影係といった感じ。この2人の関係も見ていてなんとなく不安感を抱かせる描き方。男女のカップル間の力関係、ジェンダー、ファッションモデル界の歪みなど問題提起が詰まってる。

 

船が転覆して流れ着いた島では、豪華な客船でのヒエラルキーは通用しない。食料を調達する能力がある者が一番エライのだ!という単純さ。客>客室乗務員>清掃員という序列が崩れ、サバイバル力に長けた清掃員アビゲイルが”キャプテン”になる。

 

キャプテンと言えば、船長ぶっ飛んでたな。監督は船長に現代の矛盾や偽善を言葉で語らせたんだな。

 

しかしあの場にいたら自分の立ち位置、居場所をどう確保しようとするだろう。持てる能力を活かすしかないわけだが。※能力には様々な意味がある

 

ヤヤのような”持てる者”の無自覚の傲慢さがうまく描かれてて、すごくいまどきだなーと思う。監督の批判的、皮肉な目線。金持ちだけに向けられてるわけではない。わかりやすい悪役がいるわけではないし、嫌な奴から脱落していく方式でもない。

そしてラストは、予感が当たってしまったかも。

 

なんかね、すごくたーくさん要素が詰め込まれてて、思い出しながら書いてたらキリがないくらい。

 

それにしても、ヤヤを演じたチャールビ・ディーン、本作が初主演にして遺作になってしまっただなんて、あの輝きっぷりが眩しかっただけに信じられないし悲しい。

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