アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

仏検のAPEF 存続の危機

仏検フランス語検定)を主催しているAPEFが新型コロナの影響で窮地に。

 

春季の試験が新型コロナのため実施できず検定料の収入が消え、存続の危機…。秋季の試験にも通常より費用がかかるだろうし(より広い会場や備品や人の確保とか)、流行の状況によって左右されるわけだから秋季試験の実施だって保証されてはいない。秋の収入もなくなったらマジでヤバいのでは…。

 

というわけでAPEFは寄付を募っています。

【緊急】「仏検」存続のためのご寄付のお願い | 仏検のAPEF/公益財団法人フランス語教育振興協会

 

圧倒的大多数の人にとってはどーでもいい存在の『仏検』。

わかってます。「それが何の役に立つの?」「なくてもよくない?」と言われるのもわかってます。

 

けれども、世の中には「役に立つ」ものだけあればいいのでしょうか。一見無駄に見えるものが、世の中を多様に、多彩にしているのだと私は思う。

 

ちなみに気になるヨーロッパ他言語ですが、イタリア語検定もピンチのようです…。

賛助金ご協力のお願い|[伊検] 実用イタリア語検定試験|イタリア語検定協会

 

 

仏検の危機には考えさせられた。まずここ10年ほどは受験者数が減り続けていたということ。フランス語を勉強する人口が減っているということか。「グローバル化!」と言いつつ外国語=英語と思い込んでないか。英語で全て済むと思ってないか。

 

これね、英語がかなりできて母語以外の他言語は出来ない人には感じるのが難しいことなんじゃないかと思うんだけど、英語だけでは見えない世界というのがあるんだよね。いや、私の英語レベルで言うなよって話なんだけどさ。

 

かつて通っていた東京日仏学院(現在のアンスティチュ・フランセ東京)で、そこに当時のロゴと共に、

 

Voir le monde différement.

(だいぶ文字でっかくしたよ笑)

 

とあった。世界を違ったふうに見る。違った角度から世界を見る。

 

当時の私は「これだー!!」ってなりまして、それ以来ずっと、頭の片隅にある言葉。日本語になってる情報、英語になってる情報はそれぞれ「日本語の目」「英語の目」で見た世界。同じニュースを他の言語ではどう報じられているか、多方向から見ることで脳内が多層化する気がする。もちろんフランス語に限らず多言語ほどそうなれるでしょう。

 

なので、やたらと英語英語ばかりの日本の外国語教育ってどうなんだろなーとずっと思ってる。教養としての外国語、趣味としての外国語、仕事に使う外国語、生活に必要な外国語、自分に必要な外国語、みんな違っていいはずなのに。

 

 

そして、仏語話者の中にもある仏検不要の意見。たしかに仏検は日本独自の試験なので、日本国外でフランス語能力を証明するならDELF/DALFやTCFを受ける必要がある。

 

だからといって「どうせ留学時には使えないのだし仏検はなくてもいいでしょ」というのは乱暴に思える。用途が違うのだから、違う試験がある方がいい。勉強を始めて間もないうちから受けられる試験があるというのはモチベーションにもなっていいと思うな。上級に近づくほど仏検の独特具合がましましになって、やっぱDELFやTCFの方がいいかなとなるんだけど。

 

それに、ただでさえ相当なモノリンガル社会の日本で、フランス語ほどメジャーな言語でさえ検定団体が生き残れないなんて、多様さから程遠くて悲し過ぎる。

 

 

「自分にとっては不要だからなくなってもいい」が蔓延した結果、巡り巡って自分にとって必要不可欠の大切なものも「役に立たない」と切り捨てられる日が来るかもしれない。

 

このコロナ禍においてまざまざと見せられているのがそれ。文化芸術は生活に不可欠じゃないからと、オーケストラやバレエ団や劇団などが公演できずに存続が危ぶまれる中でも支援が後回しにされたり、潰れても仕方がないと思われたりしていないか。ライブハウスやパチンコや”夜の街”が名指しされがちなのも、どこかに「まあしょうがないよね」という”世の中の空気”があるのではないか。

 

 

コロナ禍は本当にいろんな問題をあぶりだす。

さて、APFEに寄付してきます。