アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

L'Événement(あのこと)

gaga.ne.jp

 

これは重い。重すぎてまだ立ち直れない。

原作はノーベル文学賞を獲ったアニー・エルノー。1960年代のフランス、中絶が非合法で刑務所行きになるかもしれない、そんな時代。

 

成績優秀で未来には希望がいっぱいの大学生アンヌが、望まない妊娠を知り動揺し、たった一人で悩み苦しむ姿に、見てるのが辛くて。なぜ女性だけが、妊娠によってこんなにも追い詰められなければならないのか。

選択肢がないこと。味方がいないこと。妊娠によって自分の人生が望まない方向に変化してしまうということに、目の前が真っ暗になるような気持ちわかるよ。それを「受け入れろ」って、そんなこと他人に言われたくないよね。。

 

『燃ゆる女の肖像』でも描かれていたけど、合法的に中絶する方法や、中絶するという選択肢そのものがない中では妊娠は女性にとってのみあまりにもリスクであり、人生や命までもを左右するあまりにも大きな出来事。

もちろんどんな状況であっても妊娠がうれしい女性もいるだろう。そういう場合はいいのだよね。「産む」方の選択はマジョリティだし世の中からも歓迎される。しかし「産まない」方への風当たりは強い。それを女性が自分で決断することに対し、現代でも、反発する人(特に男性)がいることが本当に腹立たしい。変わるのはあなたの人生じゃないだろと。

アンヌの「いつか子供は欲しいけど、自分の人生と引き換えは嫌」というのは、だよな!!!となる。

 

フランスはその後大きく変化し、未婚で産むことも、妊娠を女性自身がコントロールすることも当たり前になっている。日本でもいつかそうなってほしいよ。。。他人の選択肢が増えることになぜかやたら反発心を感じる人が多いのが本当に謎なんだけど。。。

 

それにしてもこのずーんと重たい気持ちをどうしたらいいものか。昔話ではなく、現代アメリカでも中絶禁止なんて信じられない後退が起きたり、日本ではいまだに女性本人のみの決断では十分でないとみなされていたりする。その現実がきついしつらい。

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