アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

新国立劇場バレエ団『コッペリア』無観客ライブ配信(完結編)

新国立劇場コッペリア』の4公演無料ライブ配信、終わりましたね。最後の公演、楽しみました。前の記事に追記するつもりだったんだけどちょっと長くなりそうなので、まとめとしてこちらに。

 

www.nntt.jac.go.jp

 

2021年5月8日(土)14:00

【スワニルダ】小野絢子
【フランツ】渡邊峻郁
【コッペリウス】山本隆之

 

さすがファーストキャスト!4公演目にして初めて、物語として最初から最後まで楽しめた。

まず小野さんのスワニルダが他の3人とは全く異なるちゃんと強さのある女性であること。本人は狙ってなくてもみんなに好かれてしまうスワニルダ、自分でもその魅力を知っていて誰もを自然と手下にしてしまう(笑)。やっぱり少なくともこれくらいには上から目線でいってくれないとね。

小野さん、別の作品で何度か観ているけど私が観た中では今回のスワニルダが一番似合っていたと思う。意外と姫キャラではうーんとなってしまっていたのだけど、今日はさすがバレエ団の看板ダンサーだわと思った。

 

フランツの渡邊さんはちょいちょい力みがあるように思ったけど、ちゃんと役を生きていて振付がわざとらしくない。これが重要で、フランツに限らずだけど、なんでその動きをしてるのかと違和感があると物語として楽しむ以前にそっちが気になっちゃうんだよね。前回までの3公演はずっと違和感を抱えながらで、物語云々の前段階でいちいち引っかかってしまって。 4度目にして初めてそれぞれの人物の心情などにまで思いが至った。

 

そして山本さんのコッペリウス!やはりこの役は重要だ。一人の人間としてキャラがちゃんとある。舞台上に出てこないところまでも設定がありそうな役作り。そして2幕での小野さんとのやりとりは2人の会話が聞こえてきそうで、これがあるから物語として楽しめるんだよなあと実感した。コッペリウスの心の動きが伝わってくる分、最後がより残酷。しかし舞台上で誰かを生きられるというのは、やはりベテランだからなのかなあ。小野さん、渡邊さんとのやりとりもとてもよかった。

このトリオは、「こうやると決まってるからやってるんです」感がなかったよね。お芝居として成立していた。

 

4キャストを無料で見比べられるなんて、こんな機会は2度とないと思うし(むしろあったら困る)、バレエを見たことがない人も、劇場が遠くて行けない人や時間や都合がつかない人にもいい機会だったはず。

 

そして見比べることができてしまったがゆえの怖さも、一方ではあったのではないか。普段から複数のキャストを見に劇場に足を運ぶコアなファンは同じ作品を別キャストで観るおもしろさを知っているけど、今回そのおもしろさに気づいた人もいると思うし、同時に、キャストによる”差”も見えたよね。

 

これまで何度も新国の”表現”について違和感違和感言ってきたんだけど、キャスティングの大事さと、特に女性ダンサーには「媚び」を封印してほしいと個人的には思っている。かわいい=若さや媚びではないし、まずは自分の意志がある大人であること、その上での役柄なのだと、そこをぜひ!と思うのは私の好みゆえですかね。まあそうかもしれない。でも、若くても女性でも、自信満々でいてほしいのだよ。(役柄は別ね)

でも今日の『コッペリア』はその点で悶々とすることなく楽しんだ。あらたな発見だった。配信ありがとう!!!

www.nntt.jac.go.jp