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パリ・オペラ座バレエ団来日公演2024『白鳥の湖』2/10(マチネ/ソワレ)

2024年のパリオペ来日公演『白鳥の湖』、本日はマチソワ。

 

2月10日(土)13:30
オデット/オディール:ヴァランティーヌ・コラサント
ジークフリート王子:ギヨーム・ディオップ
ロットバルト:アントニオ・コンフォルティ

パリ・オペラ座バレエ団2024年日本公演 「白鳥の湖」 2月10日(土)マチネのキャスト

 

マチネの注目はもちろん新エトワールのディオップくん。なんという逸材!これは大抜擢も納得!

まずとにかく美しい身体条件。長く細くまっすぐな脚。ひざ下何センチあるんでしょうか。まだ若く線が細いので、その長い手足を持て余すかのようでもある。しかしまあよくぞバレエをやってくれました、そして育ててくれましたよね。

大人になることを求められ悩める少年王子を地でいくかのよう。今のこの年齢だからこその王子像。ソロはもう完璧なのだ。柔らかく美しいアームス、見事なジャンプ、長い脚が正確なポジションで柔らかく美しくなめらかに語る。逸材!こういうダンサーが登場するのだよね…(溜息)

一方で、踊りと踊りの間の時間、例えば歩いて移動するときなどに王子ではなく素を感じることがあった。パートナーシップであったり、ケミストリーであったり、舞台を最初から最後まで繋がったひとつの物語にするところまでには、まだ成長と経験が必要なんだろう。これからが楽しみである。

 

そしてヴァランティーヌの白鳥は安心安定のオペラ座スタイルで、ヴァランティーヌ自身にテクニックがあって脚が強くても、余計なことはしない、やりすぎない。すべては踊りで語るのだ。素敵。そういえばインスタで見たのだと思うけどヴァランティーヌのコーチはアニエスだったよね。私の好みであるはずだ。

 

で、白鳥は上からも観たかったのでこの回は4階正面を取ったのだけど、コールドバレエの美しさを堪能した!特に2幕4幕の白鳥たちのコールドは上から観るの本当におすすめ。あの複雑なフォーメーションの変化、魂を共有しているかのような動き、4階から見下ろしているとほんとによくわかって、あのレベルのダンサーたちがこの人数揃っていて、あのクオリティで毎回踊るって、すさまじいよな。

1幕の男性コールドの踊りまくりの場面も大好きで、あそこも本当に複雑な構成になっている。2/9は舞台に近い距離からコールドの内部をのぞき込むかのような、そしてこの回は遠目からヌレエフの考えたコールドの理想形みたいなものを見た。

コールドであっても振付はヌレエフの鬼振付なので、ダンサーたちは疲労していると思うけど、パリオペの底力を見せてくれている。

 

そしてソワレ。こちらのチケットは二次販売で追加したもの。2階正面から。

2月10日(土)18:30
オデット/オディール:オニール八菜
ジークフリート王子:ジェルマン・ルーヴェ
ロットバルト:トマ・ドキール

パリ・オペラ座バレエ団2024年日本公演 「白鳥の湖」 2月10日(土)ソワレのキャスト

 

最初はこのキャスト取ってなかったのよね。(理由は割愛)

しかしこちらのジェルマンのインタビューを読んで、やっぱりジェルマン王子も観たいかも…と思っていたところ、二次販売で良席を押さえることができて。

balletchannel.jp

 

「僕と一緒に、物語の世界を生きてほしい」ですよ!?

そう言われたら、ねえ。そして実際に、ジェルマンの王子はまさしく”王子の物語”であり、”王子と家庭教師ヴォルフガングの物語”であり、ヌレエフ版ならではの様々な妄想が可能な素晴らしい出来だった。

ポール・マルク、ギヨーム・ディオップと若いエトワールが素晴らしいパフォーマンスを見せる中、ジェルマンがどんな王子を見せてくれるのか。

いやー、舞台と物語を導く力、これが経験と成熟なのだろうか。ジェルマンは舞台上で常に王子として生きており、ただ立っていても、ただ歩いていても、王子が何を考えているか、なぜそうしているのかが伝わる。すべて理由があってそうなっているのだと思える。空白になる”つなぎ”がないのだ。

ポールマルクやディオップくんがジャンプで拍手をもらうなら、私はジェルマンのプレパレーションに拍手したいくらいだよ!ああそのアームスきれい(拍手)、タンデュがきれい(拍手)みたいな感じだよ私の脳内は(笑)

 

そしてトマ・ドキールがよかった!一幕の王子との視線の交わし方、王子を翻弄する態度、冷たい笑み、めっちゃ好みだった!これはジェルマンとトマで作り上げたものだろうけど。ジェルマン王子が好きなのは家庭教師ヴォルフガングで、王子は彼に気にいられたいのにままならない。思い通りにならず悩み傷つき、周りからは結婚を迫られる。ジェルマン王子かわいそう…。(悲劇のジェルマン大好き)

 

なので二幕で出会うオデットとは、中身の人間にではなく美しい白鳥という生き物に惹かれた気がする。人間ではなく白鳥。美しい生き物に出会い現実を忘れることができた。

 

もう私の中ではジェルマンとトマの物語で、3回目ということもあって2人に集中して観られた。三幕の不敵なトマよ!いいわあ、もっとやっていいよ(笑)。あとロットバルトにはマントをバッサーとやってほしいのだけど、トマは見事にバッサーとやってた。脚がきれいなのでジェルマンと対峙してもいいよね。だから組ませてるのかもしれないけど。

最後、王子とロットバルトのバトル、横たわる王子を踏み越えて行くロットバルトが最後に冷酷な笑顔を見せて本当に良かった!(壊)

悲惨な最後が似合いすぎるのよジェルマン王子…ありがとう……観に行ってよかった!!

 

ハナさんの白鳥は思ってたよりはよかったかも。私の好みではないけども。

ジェルマンの相手には同じくフレンチスタイルを体現するダンサーで観たいのよねえ。

 

しかし、やはりマチソワは疲れるね。脳が疲れて大変。

明日はもう白鳥最終日。ちゃんと寝なくては。

 

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