アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

英国ロイヤルバレエ団『バーンスタイン・センテナリー』in シネマ

ロイヤルバレエ団、バーンスタイン生誕100年を記念したトリプル・ビル『バーンスタイン・センテナリー』2018年3月27日公演の映画館上映。

BERNSTEIN CENTENARY
WAYNE MCGREGOR, LIAM SCARLETT, CHRISTOPHER WHEELDON

ROYAL OPERA HOUSE | The Projector

 

YUGEN (ウェイン・マグレガー振付)
タイトルは日本語のYUGEN(「幽玄」と思われる)。音楽はヘブライ語で歌われているChichester Psalms。

シンプルなセット、男女差のない衣装。純粋さ、気品、人間の美しさを体現しているダンサーたちへの賛歌のよう。少年の独唱が入るのだけど、ここをとても若いダンサー(Calvin Richardsonだと思う)が踊っていて、迷える子羊と言ったら言い過ぎだけど、霧の中(人生)をさまよう青年といった雰囲気でとても良かった。
そしてサラはいつ見ても美しい。

 

THE AGE OF ANXIETY(リアム・スカーレット振付)
抽象的だったマグレガー作品から一転、第二次大戦直後のニューヨークが舞台のお芝居仕立ての作品。音楽は交響曲2番。テクニックはクラシックバレエベースなんだけど、セットも衣装も非常にリアル寄りでブロードウェイの作品みたい。観たことないけど(笑)

バーに居合わせた4人の客の物語。サラ・ラム演じる魅力的な女性と、水兵、パイロット、ビジネスマン。女性をめぐる物語かと思いきや。

前半はひたすらバーの店内が舞台なので狭いのだけど、その後の展開が秀逸。4人の間のやりとり、絡み合う目線、芽生える感情。みんな役者!

戦争色濃い時代背景、今と比べて”抑圧”の多い世の中。宗教、セクシャリティ、簡単には表に出せない、出すことの許されない秘めた感情。ああ!そういう作品だったのか!

と、最後で一気に感動。

 

CORYBANTIC GAMES(クリストファー・ウィールドン振付)
音楽はセレナード。上演前の作品紹介で衣装が取り上げられてたけど、全く好みじゃなかった。あの上半身についてる黒いぴらぴらしたのはなんなんだ。視覚に邪魔。

ウィールドンが物語バレエじゃない作品を作るのは久しぶりってインタビューで言ってた気がするんだけど、シンフォニックバレエほどには音楽を体現してるとは言えないし、2楽章あたりでミルピエの『ダフニスとクロエ』が思い浮かんできちゃって、組体操っぽいとこが似てたのかな、なんかもう途中で集中力が切れてしまった。

演奏は素晴らしかった。

 

「僕の」ではなく「僕たちの」バレエと語ってたマグレガーのダンサーたちとの一体感、ロイヤルのダンサーをよく知ってるからこその配役も見事だったスカーレット。(ウィールドンは私にはわからないのでノーコメント)

先日のショスタコーヴィチといい今夜のバーンスタインといい、国は違えど激動の時代に翻弄されそれを反映した作品なんだなあと改めて考えてる。

いろいろ咀嚼した上でもう一度見てみたい。

 

今後のROHシネマ、残すは6/9のマクベス(オペラ)と7/28の白鳥の湖(バレエ)。

なぜ『マノン』をやってくれないのだシンガポール!(何度でも言う)

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