アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

フェリ、ボッレ&フレンズ Aプロ

フェリ、ボッレ&フレンズ ~レジェンドたちの奇跡の夏~
2019年8月1日19時 文京シビックホール

 

フェリ、ボッレ&フレンズ/NBS公演一覧/NBS日本舞台芸術振興会

 

私はバレエ鑑賞歴が長くないのでフェリが一度引退する前の踊りは観ていないのだけど、昨年の世界バレエフェスでのフェリに感動した記憶。今回はそのフェリとボッレが中心となったガラ。

 

それにしても今年の東京のバレエ公演の多さにはもう大変。多すぎてこの公演も直前までチケット取っていなかったのだけど、観て良かった。

 

 Aプロのメインは第3部のフェリとボッレによる「マルグリットとアルマン」だけど、それ以外にもアッツォーニ&リアブコ、ゴメスと好きなダンサーが出演。

 

特にアッツォーニとリアブコの2人には観るたびに特別な思いにさせられる。今回2人が踊った2作品を観ながら、この2人は魂で繋がっているのだなと感じた。なんだろう、運命のパートナーとでもいうのか、とにかく特別なつながりを感じさせるのだよね。

数年前にたしかエトワールガラで観たこの2人による「アルルの女」は今回も突出して素晴らしく、アッツオーニの報われない悲しみ、リアブコの空を見つめる目が語る狂気、2人が作る世界に心を持っていかれた。初めて見たホレチナ振付「Falling for the Art of Flying」も美しい作品で、アッツォーニとリアブコの持ち味を堪能。

 

ゴメス振付の「Ami」はゴメス本人とリアブコが踊る男性PDD。これよかった!女性のパートナーと踊る時は非常に献身的なタイプの2人が男2人で踊るというのが面白く、振付に茶目っ気があり、互いへの敬愛が感じられる作品だった。同世代で、タイプは全く違うけどそれぞれに素晴らしいキャリアを持ち、人間的にも素晴らしい、その2人を観られるしあわせ。ゴメスの人柄が現れた作品とも思った。

 

そしてアシュトンの「マルグリットとアルマン」はフェリとボッレ、アルマン父をマルセロ、公爵をリアブコという豪華版。ベテランダンサーたちの物語を作る力、すごい。マルグリットとアルマンの出会い、幸せな時間、別れと絶望、そしてマルグリットの死と30分余りで劇的に展開される作品だけど、フェリもボッレもその感情の動きを雄弁に語る。セリフって、不要なんだよね、ほんとに。言葉が陳腐に思えるほど。脇役ながらアルマン父のゴメスがまたいい味を出していて、切なく苦しくなった。

この作品、音楽はリストのピアノソナタで生演奏だったんだけど、バレエの伴奏としての演奏というのは何をどの程度求められるのか難しいところだよね。先日金子三勇士さんのリサイタルで同曲を聴いたばかりだったので、本作品中のは演奏単品としては少々思うところもあり、でも曲優先で踊りにくかったら本末転倒だし、ね。難しいね。

 

このAプロ出演はわずか7人だし、いわゆる古典のパドドゥはひとつもない。逆に言えば、ネオクラシックやコンテこそベテランにしか踊れない、表現できないものがあるということか。それは確実にあると思うんだ。人間性が現れる。

バレエという芸術を極めてきた人たちから出てるオーラの美しさに、改めて尊敬と感動。

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