アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

フェリ、ボッレ&フレンズ Bプロ

フェリ、ボッレ&フレンズ~レジェンドたちの奇跡の夏~Bプロ

2019年8月3日、4日 文京シビックホール

 

フェリ、ボッレ&フレンズ/NBS公演一覧/NBS日本舞台芸術振興会

 

Bプロ初日のカーテンコールにはノイマイヤー先生も登場するくらいノイマイヤー祭りだったBプロ。なんて独別なプログラムだろう。

 

バーンスタイン組曲」はハンブルクバレエのダンサーたちとフェリ。ノイマイヤー作品の”陽”の面。最後のリアブコとトルーシュのPDDはハンブルクの頂点とその弟分といった感じで微笑ましく観た。無駄がなく的確で、それでいて無機質とは正反対のドラマ性、語る眼差し、リアブコこそがノイマイヤー作品を体現しているように思えて、彼の踊りが観られてしあわせ。アッツォーニとフェリの衣装がステキで欲しい(笑)

 

リベルタンゴ」ではゴメスの魅力爆発でほんとすてきー。柔らかく滑らかでムンムンで、こんなのお手の物だよ!っていう余裕。タンゴ似合い過ぎる。もっと長く観たい。水香さんに振付けられた作品(高岸直樹振付)とのことだけど、彼女は”可愛い”を是としているダンサーなので(勝手な解釈)、背伸びして大人ぶっているように見えてしまう。それが彼女のキャラだと思うのでそれをいいと思う人もいると思うけども。好みの問題。

 

アッツォーニとボッレという意外な組み合わせによる「オルフェウス」PDD、これがまた素敵な作品だった。ボッレのオルフェウスは、ノイマイヤーワールド的には”普通の人”っぽくて、ノイマイヤーを体現する最高峰ダンサーのアッツォーニとの対比が効いてそれがとても良かったのかも。人間と幻みたいな。エウリディーチェと束の間の時間、美しく切なく、そして”あちら側”へと戻っていくアッツォーニ。その表現。涙。

 

マリファント「TWO」はすっかり忘れてたけどギエムので有名なやつね。ボッレだと、深夜に美術館の彫刻が動き出した感があって、その肉体美、筋肉のひとつひとつを存分に愛でるがいい!みたいに見えた。ボッレのサービス精神素晴らしい(笑)

 

グラツィアーノ「アモローサ」もダンサーの美しさを堪能。どこまで軽やかなのだろうというアッツォーニと雄々しく優しいゴメス、この2人だとなんでも軽々簡単に見えそう。ゴメスは誰と踊ってもパートナーシップが素晴らしいよね。

 

今回の目玉のひとつと言ってもいい「作品100~モーリスのために」はボッレとリアブコのPDD。ノイマイヤー言語で踊るリアブコと、それを追うボッレ。なんて愛おしいの!涙で視界がかすんでしまった。踊り終えた二人の満足げな様子がまた。バレエ団を超えた共演が素晴らしい機会をもたらしたのだと、そしてそれを目の当たりにしているのだと、この貴重な機会に感謝。

私、今回の公演を観て、ボッレってとても純真で素直で可愛い面を持っている人なんだなってわかった。あの見た目でバレエ界のスターなのに。新たな発見だった。

 

第三部は「フラトレス」。まるで全幕物をみたかのような気持ちになった。ノイマイヤー作品の”精神世界”。ドゥーゼ(フェリ)と4人の男。リフトされ宙を舞うフェリのこの世のものとは思えない存在感。じっと座っているだけでも何かを語る、その存在感は一体どこから来たのか。神々しいまでに研ぎ澄まされた様に感動。ハンブルクから参加のトルーシュ、アザチャン、フペーテ、ユングはさすがノイマイヤーダンサーで、そうでなければこれほど濃密な空気は生まれなかったと思う。わざわざBプロだけに来てくれただけのことはある。

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今回、AプロBプロを通してドンキや海賊のようなガラでおなじみのいわゆる盛り上がり演目が1つもなく、全体に大人な、マニア向けと言ってもいい内容だったかもしれない。でもこういう攻めのプログラムを上演してくれたことがとても嬉しい。だって「観客はきっとこれをわかってくれる」と思ってプログラム組んでるわけでしょう?私は多いに楽しみました。Bプロは急きょ買い足して2回観たよ。

 

 

6月下旬から8月上旬にかけての東京圏のバレエ・ダンス公演の多さは異常で、色々観れて嬉しい反面、公演が重なってしまったり、会場がバレエ向きでなかったり、遠かったり、ストレスが溜まる面も。

 

ル・グラン・ガラとフェリ・ボッレで通った文京シビックホールは客席の傾斜が緩く、前の人が座高高いとかなり視界が遮られる。運良く前の人が小柄で見やすかったのが2回(S席、1階前方センターブロック)、ステージに近すぎ&傾斜なしでストレス溜まりまくりだったのが2回(A席、5列目)、戻りがあったのか通路後ろの良席を直前購入でノーストレスが1回(S席)。A席は割引で16000→10000になってたので諦めもついたけど、そもそもあのエリアを16000円で売ろうというのがビックリ。文京シビックは舞台が高いので前方フラット席からはつま先は全然見えない。バレエなのに。それは売れないよね、と。NBSさんはもっと実態に見合ったチケットのカテゴリ分けをがんばってほしい。。真剣に訴えたい。

 

クラシック音楽の公演などでは問題ないのだろうけど、バレエ・ダンスにはきついよね。文京シビックのみならず、新しいホールであっても見やすいとは限らず、どうして見やすい劇場ができないのか不思議だ。。客席の傾斜を付けるのってそんなに難しいのかな。