アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

PARIS Ballet LEGENDS

甲府で開催されたPARIS Ballet LEGENDS~パリ・オペラ座ダンサーたちによる夢の競演~。なぜ甲府?など事前の謎が多かった公演なのだけど、観に行って良かった。当日券、日帰り。(笑)

 

パリオペのエトワールで衣装デザイナーのアニエス・ルテステュが地元の織物を使って衣装をデザインし、それを着たパリオペダンサーが踊る、というもの。地元のバレエっ子たちや和楽器の演奏とのコラボも。

 

観に行く決め手になったのはパリオペを退団済のエトワール、アニエス・ルテステュとジョシュア・オファルトの出演。特にジョシュアは定年まで何年も残して突然引退してしまったから、その彼が踊るなんてもう二度と観る機会はないかもしれないと思って。

さらに普段は大きい役で観る機会のないコールドバレエのダンサーの踊りも観られるのがこういう企画のいいところ。実際、まさにその通りになった。

 

アニエスは「天井桟敷の人々」のガランス。彼女のためにあるような役で(振付:ジョゼ・マルチネズ)、フローラン・メラックのバチストとのやりとり、感情表現、そして踊り出すとその足先の美しさ、語る脚、身体がもう、現役の頃と変わらず素敵で一気に感動。あああ、やっぱり好き!!となった。今の若いエトワールたちを見慣れていたところに、女王の存在を見た感じ。やはり特別なダンサーだ。そしてフローランもよかった。バチストはエトワールの役だけど、コールドの彼がこんなにできるんだと、パリオペのレベルを改めて感じた。

 

ジョシュアの方は、ミュリエルとのル・パルクの"解放"のパドドゥに感動。フルではなかったかもしれないが、あの作品は完璧に踊ればそれでいいというものではなく、年齢やケガなどなんらかの制限がありながらも数々のダンサーが名演を見せてきたもの。あの作品の意味を考えると、それでいいのだと私は思っている。ジョシュアとミュリエルのは官能度が高く、これぞ大人の!フランスの大人の!という世界。いい意味で人間離れしていない、生身の人間の感情のやりとりを見ているようで、見入ってしまった。

 

ここでちょっと書いておきたいのが、この公演は地元とのコラボというのがあるために客層が東京のバレエ公演とは違って、子供も多かったし、バレエに興味はないけどなんかの関係で来たといった風のおじさんたちや、近所のおじいちゃんおばあちゃんといった感じの客層。

であったのに、天井桟敷やル・パルクみたいな”大人な”演目を入れてくるところ、さすがじゃないですか?(笑) 

 

さて若手。ロクサーヌとアントニオがとても良くてうれしい驚き!ロクサーヌの長くて強い脚、かっこいい!好き!そしてアントニオもすっかり大人になって踊りにいい感じの色がある。一部ではアニエスデザインの衣装で海賊のPDD、二部ではセバスチャン・ベルト―の「Renaissance」をバルマンのキラッキラ衣装で。どちらもとってもよかったー。

 

もう一組、アリス・カトネとマルク・モローは、アリスがちょっと不調に見えた。それを支えるマルク・モロー、さすが経験値もあるせいか余裕があった。あまりクラシック作品で観たことないけど、踊ればやっぱりつま先まで隙なくきれい。

 

この企画、アニエスが地元の生地で衣装を作ってそれを着るという縛りがあったから、「海賊」と「ドンキ」は新制作。「天井桟敷」も既存だけどアニエスのデザイン。バルマンの衣装も話題だったベルト―の「Renaissance」のような新しい作品、ジョゼ振付の「ドリーブ組曲」そしてガラではおなじみプレルジョカージュの「Le Parc」とプログラムはフランス度高めでなかなかの並び。ドンキのグラン・パドドゥは短縮版でびっくりしたけど、上演時間の制限があったのかも。

 

幕を下すタイミングや照明がなんだか心もとなくて、運営側もバレエに慣れてない感じがしたけど、観客もドンキのフェッテで手拍子したり、ル・パルクの途中で拍手したり(キスで回るとこ)、やめてーーーってなった。

 

ああいうところで拍手するっていうのは一体、何を想いながら見ているのだろうか??

 

シンガポールでもよくあるけど、バレエ(特にガラ)を見る時に飛んだり跳ねたり回ったりすると拍手が起きて、まあそうやって技を見て単純にすげーってなるのも入口の1つだとは思うものの、曲芸じゃないんだから、そうじゃないだろってやっぱり思うのよね。その先を知り、魅力を発見してほしいとつい思ってしまうのだけど。余計なお世話なのかな。

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ロビーに展示も。

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