アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

Der Fall Collini(コリーニ事件)

ベルリンで起きた著名な経営者の殺人事件、容疑者は何も喋らない。弁護を担当するのは新人弁護士。引き受けてみたら被害者はなんと自分の恩人だった…。

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非常に見応えがありズシリとした重みが後味として残る映画だった。素晴らしい。被害者も容疑者もわかっているのに、大きな謎がある。容疑者コリーニは理由を何も語らない。その謎を弁護士ライネンが解いていく。

 

現役の弁護士フェルディナント・フォン・シーラッハの小説が原作とのこと。じわじわ何度も感動した。これほどの自国の負の遺産を正面から見つめ、小説や映画の作品にし、受け止めることができるドイツ。戦中の蛮行に、その後の時代の住人がどう向き合うべきか。非常に考えさせられるものがある。

 

ドイツ映画でナチス関係のものってたくさんあるよね。例えば日本に置き換えたとして、一般人はどう反応するだろうか。私には、現代日本人が過去の自国の戦争犯罪を直視できているようには思えない。

 

弁護士ライネンはトルコ系でであること、家族も知らなかった被害者の過去、人間の多面性、ヨーロッパにおける戦争の爪痕。法とは、法治国家とは、正義とは。心の傷を癒す手段に制限はあるのかないのか。感情と法律の間で揺さぶられる。

ナチスドイツの罪に向き合っているように見えるドイツでさえ実は向き合わずにきた過去があったのだな。これほど多くを語り多くを問う映画を作った監督すごい。

 

そして台詞では語らないのに抱えている過去の重みを表情で語るコリーニ。俳優陣も素晴らしかった。なんかこう、あらゆる面で日本と比べちゃうわ…。

 

原作小説も大反響でドイツ社会を揺るがしたというのだから読んでみたくなる。

 

ナチスひどかったねー、ドイツ大変ねー、みたいな他人事で済ますのではなく、では他国ではどうか、自分の国ではどうかと視野を広く持っていたい。