アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

Funan(フナン)

映画『FUNAN フナン』公式サイト

 

1975年カンボジアクメール・ルージュに平穏な生活を奪われた家族の話。

突然日常が奪われる恐ろしさ、奪う側に誰がなってもおかしくないという恐ろしさ。アニメーション映画で描かれる過酷な時代。

 

多くの人々と共に強制的に移動させられる中、チョウとクンの夫婦は3歳の息子ソヴァンとはぐれてしまう。厳しい強制労働、全うな食事や家族や尊厳を奪われる日々。息子と再会できないまま3年以上が経つ。私だったら絶対に生き残れない!と何度も思った。肉体的な厳しさはもちろんキツイが、精神的なダメージの大きさをおもうと辛すぎる。しかし厳しい中でも残る人間らしさに、少しだけ救われる。

 

元々は同じ土地に暮らしていた人たちなのに、なぜこんな対立が生まれてしまうのか。人はなぜこんなに残酷にもなれてしまうのか。家族や隣人であっても、近しい人だからこそ、互いを理解できないダメージもデカい。

 

たぶん15年くらい前になるけど、アンコール遺跡のあるシェムリアップに行ったことがある。あの頃は私もまだ行ったことがある国や文化も少なかったし、現地の子供たちが観光客に1ドルの土産物をなんとか買ってもらおうと集まってくるのに複雑な思いをしたのを覚えてる。当時の経験値では、旅行先としては一番貧しいところだったかもしれない。日本語を学んで観光ガイドをしている若い人と話して、彼らが日本語を勉強してよかったと少しでも思ってもらえたらと思ったものだった。あの時の経験は結構衝撃だったのだよね、私にとって。旅って観光地見学だけじゃないのよね、長く記憶に残るのって。

 

監督はカンボジアにルーツを持つフランス人のドゥニ・ドー。べレニス・ベジョとルイ・ガレルが主役2人の声で出演。

 

最後の、風が吹くところでじわーっと泣いた。

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