アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

CODA(コーダ あいのうた)

gaga.ne.jp

 

アカデミー賞作品賞を獲ったから言うわけではないのだけど、さすが良くできてるわー。多くの人に響く要素が盛りだくさんだし、すでに多く話題になっているようにろう者である俳優自身がろう者を演じている点も世の中の意識がまた一歩進んでいるのだと感じさせる。

 

家族の中で唯一の聴者である高校生ルビーが「生まれた時からずっと家族のための通訳だった」と吐露する。重い。日本では”ヤングケアラー”という言葉が使われるようになったが、家族内の依存、共依存、といったことを考えさせられる。

 

ろう者であることで感じるコミュニティ内での疎外感や、一人前として扱われない鬱憤、それでも妹ルビーに呪いをかけない兄レオいいわー。俺たちのために残れとは絶対に言わない(言いたくない)のだよね。

 

しかし父トロイが娘の歌声に”触れる”場面、思い出してもぐっとくるものがある。いろんな思いが溢れてくる…。トロイ・コッツァー、アカデミー賞受賞おめでとうございます。納得。

 

そして家族内のことだからと距離をとるのではなく、適切な助言と手段を与えてくれる他人の存在の大切さなー。この作品でいうなら音楽のV先生。

 

先日観た『ベルファスト』でも感じたのだが、より広く可能性のある世界に旅立とうとする人の背中を押すよね。日本って、家族のために犠牲になるのが美徳、美談とされる傾向があると思うんだよな。『盛綱陣屋』にも通じるけども。

 

”家”の縛りか、”個”の選択か。「家のため、家族のためだから」といえば同じ日常が続いていくけど、新しいことを始めようとするのは挑戦なんだよね。自分の選択であるし、自分の責任でもある。その責任を回避するため、選択することそのものを避けるための言い訳として「家族」を出してくるのは反則だと思うんだよ。(日本社会でたびたび感じる不満だ)

 

と、ちょっと脱線してしまったが、アカデミー賞作品賞を獲るくらいの間口が広く好感度の高い作品だった。(正直作品賞は意外だったんだけど)

 

これ、2014年公開のフランス映画≪La Famille Bélier≫(邦題「エール!」)のリメイクなのね。なんかどこかで聞いたことがあるような設定だと思った。こちらも見直したい。