アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〈Bプロ〉

コロナ禍では毎度のことだけど、ダンサーのみなさんが本当に来日できるのか心配だった。実現できてよかったね。

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3公演3プログラムということでどれ観に行こうか悩んだ。バデネスとフォーゲルの「オネーギン」と「うたかたの恋」のPDD、そしてフォーサイスパリオペに振り付けたBlake WoksⅠが観たかったのでBプロに。

が、キャスト変更で「オネーギン」PDDはロシオ・アレマンとマルティ・フェルナンデス・パイシャに。フォーゲルの負担減らすためかしらね。「ボレロ」のフォーゲルに代わりはいないから。

 

いやもう本当に、今日はフォーゲルの「ボレロ」に尽きる。

 

正直なところ、全幕からガラに変更になり「ボレロ」が入ったのはチケット売るためなんだろうなあ、みんな好きでしょう?ボレロ、ってことなんだろうなあと思っていた。すいませんでした。

 

初めて見るかのようなボレロ。確かに踊り手によって違って見えるし、ダンサーによって少しずつ振付を変えていることもある。だけど今日のフォーゲルのボレロはそういう次元ではなく新たなボレロに見えた。なんだろう、この気持ち。

 

ボレロ」という作品は本当によくできていて、音楽と相まって会場も盛り上がるし、あの赤い台の上で1人踊り続けるダンサーの生き様を見ているかのよう。特にベテランダンサーが踊ると、その人のダンサー人生そのものに思えてくる。

 

フォーゲルの磨き抜かれ研ぎ澄まされた身体。ここに至るまでどれほどの年月と努力が重ねられてきたんだろうか。そう考えずにはいられない。まさに芸術そのもの。積み重ねてきた人生をあの台の上でさらけ出す。感涙。凄いものを見てしまった感。

 

一つの完成形とでもいうか。いや、きっと永遠に完成はしないし終わりもないんだろうけども。それでもやはり、究極というかね。今まで見たのと全然違う感覚はどこからくるのかとぐるぐる考えている。ボレロにフォーゲル自身を重ねているように私には思える。自身の到達点を惜しげもなく差し出している…。

 

素晴らしかったなあ。。。(歌舞伎座みたいに幕見チケットがあったらいいのに。)

 

他の演目についてはまたあとで追記することにする。

 

では追記。

第一部は満足度で言うとちょっと微妙だった。1作品目に「眠り」GPDDは若手には荷が重かったのでは。ローザンヌで印象深かったマッケンジー・ブラウンだけども。

続くコンテ2作は、あえてこのガラで見たいもしくは意味を感じるというものではなかった。嫌いじゃないけどね。そして「オネーギン」鏡のPDDはキャストチェンジにより、ふーんという間に終わったかな。

まあ私がシュツットガルトのダンサーをあまり知らないというのも理由の1つだろうし、久しぶりの生舞台で心の準備ができてなかったのかもしれないし、まあ。

 

第二部の方が見応えはあったかな。しかし「椿姫」はパリオペ至上主義の私なのでなあ。男性PDD「やすらぎの地」は割と好きな系ではあった。

ロミオとジュリエット」バルコニーPDD、これは「オネーギン」と同じキャストで、しかもどちらも”しあわせモード”なのよね。せっかくなら全く違うタイプの表現を見てみたかったな。そしてクランコ版の特徴である”懸垂キス”がなかった。セットのせいかもしれない。

「Blake Works Ⅰ」はどの部分が踊られるんだろうかとドキドキしてたんだけどね。あっという間に終わっちゃってもっと見たい!これはダンサーが楽しそうに踊るし、ダンサーの身体のうねりる感じが好き。パリオペに振り付けられた作品なので、シンプルで基本的な動きの中で魅せる美みたいなのがとても好み。

 

そして「マイヤリング」でついにバデネスとフォーゲルのコンビが見られたわけだ。全幕見たかったよねえ。。。物語バレエのほんの一場面も抜粋なのに、そのはじめから濃厚なドラマを感じさせる2人。これですよ、観たかったのは。見たいけど見てはいけないものを見せられているような、そんなドキドキを感じさせる。

 

と振り返って思うけど、フォーゲルの「ボレロ」はドラマなんだな。という気がしてきた。ドラマチックバレエを演じてきたフォーゲルならではの、ドラマチックボレロ

 

ところで「ボレロ」のリズムは東京バレエ団の男性ダンサーたちが共演しているわけだけど、例えば二コラの時はちょっともうあまりにも身体の質量感からして違い過ぎて辛いものがあったけど、今回はそんなに気にならなかったかも。やはりメロディとリズムが別世界ではちょっと、ねえ。

 

というわけで、ひとつひとつについては好みや満足度において波があったけども、コロナ禍と戦争の影響による長旅にも関わらず来日してくれてありがとう!!!と伝えたい。

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