アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

英国ロイヤルバレエ団『シンデレラ』in シネマ

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マリアネラ・ヌニェスとワディム・ムンタギロフというロイヤルの鉄板ペア。ネラ様の鉄壁のテクニックと、理想的ダンス・ノーブルのワディム。お見事。

 

アシュトン版『シンデレラ』がロイヤルで上演されるのは10年ぶり、初演から75周年とのこと。10年も間が空くと踊ったことがある現役ダンサーが少ないから継承が重要だよね。幕間に今シーズン限りで引退のラウラ・モレーラが若いダンサーたちを指導している映像とインタビューがあったけど、ああいうのもっと見たい。

 

ロイヤルのシネマ中継は毎回、この幕間のインタビューやスタジオでのリハーサル映像などが本当に貴重で、むしろ本編よりもこちらの方が価値があるのではと感じたりもする。

 

というのも私、すっかり忘れてたんだけど、古典的シンデレラみたいなおとぎ話系ってあんまり好きじゃなかったんだった。(笑)

ネラ様が踊っている時は大丈夫なんだけど、四季の精やコールドバレエになると途端に眠気が…。一幕終わりの方、うとうとしてしまってかぼちゃの馬車とかネラ様の変身とか見逃した。『シンデレラ』なのに!そこ見どころだろ!(自分の興味の無さに呆れている)

 

実はパリオペラ座のヌレエフ版以外ちゃんと『シンデレラ』を見たことなかったのかもしれない。あちらの衣装は森英恵だが、ロイヤルの新衣装、私個人の好みではあまりなかったかも。舞台装置やプロジェクションマッピングを取り入れた演出などは、新鮮だったけども。あと、白鳥でも同様なんだけど「道化」という存在があまり好きではない。なんとなく。

 

今回の見どころはなんといってもネラ様で、ネラ様本人のキャラクターからしてもシンデレラ役似合ってる。一幕はシンプルな振付ゆえに彼女の見事な身体能力が際立つ。なんだろうあの身体の引き上げっぷり。ポワントで立ってるとなんなら宙に浮くんじゃないか、ネラ様なら可能なのではと思うほど。その分足元に余裕があって何をやっても簡単に見える。感嘆。(ダジャレではない)一体どんな努力の積み重ねであれほどの身体と技術を身に着け、そしてそれを維持しているのだろう。いや、維持どころか今なお進化しているのだから恐ろしい。二幕のPDD美しかったなあ!

 

そしてワディムのあの、浮世離れした王子様っぷり。これまたお見事。クラシックバレエの王子って本当に選ばれし者にしか踊ることが許されないもので、いやもちろん踊ってもいいんですよ、いいんですけど、王子なんですという説得力が自然ににじみ出るダンサーというのは、そうはいない。シンデレラの王子役は、特に深い役作りが求められるタイプの役ではないだけに、立っているだけで王子であることを納得させられるダンサーでなければならない。それを完璧にやるのがワディムなのだ。もちろん踊りもちゃんとノーブルである。

 

アシュトン版ではシンデレラは義姉たちに召使のように使われてはいるものの仲が悪いわけじゃないんだね。ギャリーさんほんと芸達者。

 

今回ロイヤルの『シンデレラ』を観て、当然のことながらパリオペの『シンデレラ』を思い返すのだけど、初めてパリオペのを観た時、「ハリウッドスターって!(笑)」みたいな気持ちがあったんだけど、今になってみるとヌレエフよく考えて作ったなと思う。義姉たちの設定もそうだし、バレエ教師役も含め全体に男性ダンサーにも見せ場が作られている。(と、またしてもパリオペ贔屓なこと言ってしまった)

アシュトン版は古典らしい古典だよね。

 

ロイヤルバレエの来日公演が迫っている中でのシネマ上映ということで、やっぱり生の舞台も見たい!となる人もきっといるだろうね。

 

私はサラジュリエットを心待ちにしています……