アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

オペラ座ガラ〈Bプロ〉

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今回のこの、フロランス・クレールが指導するオペラ座のダンサーたちが集う『オペラ座ガラ』という形式、とても良かった面と、改善を望む面と、はっきり表れた気がする。

 

まずとても良かったのが、エトワールらソリストだけではないからこその、オペラ座の雰囲気が伝わる構成。

Bプロで言うなら「ナポリ」のパ・ド・シス。普段コール・ド・バレエとして踊っているダンサーたち6人によるものだが、それぞれにソロがあり個性を出せる場面もありつつ、群舞として彼らが揃ったときのあのなんとも芳醇な空気というかなんというか、これは他では絶対に出せないね、という雰囲気が立ち昇る。たまらん。フロランスがこれをダンサーたちのために、そしてオペラ座を求めて観に来る観客のために選んだのだなと、よくわかる演目だった。

 

Bプロの最初はパクさんとポールマルクの「ゼンツァーノの花祭り」で、続く「ナポリ」と2作品ブルノンヴィル。ヌレエフじゃないのか?となりそうなところだけど、このいかにもクラシカルなブルノンヴィルって、足先が美しくないと見たくない。というか、美しい足先があってこそだと思う。であるからして、パリオペには向いている。彼らの繊細で美しい足さばきが映える。派手さはないのでマニア向け寄りかもしれないけど、私はとっても堪能した。この2人なら安心してうっとりできる。

 

最初の2作品の牧歌的なセットからいきなりすっきりなんにもないステージで、ハナさんとジェルマンの「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」。ブルノンヴィルからバランシンへ、時代の差が凄いね。そしてこの男性ソロでこんなに優美なの初めてみた!あまりに優美でびっくりしたよジェルマン。本当に美しいな君は。パリオペラ座のエトワールが踊るとこのヴァリエーションもこうなります、という魅力と説得力。たまらん。

 

休憩を挟んでの「さすらう若者の歌」、アントワーヌ・キルシェールがとても良かった。アントワーヌをソロで観たのは今回が初めてだったので、これは今回の発見であった。ラインが美しく、踊りに情緒があって。まだ若いダンサーでプルミエになって間もないけど、今後どんな役を踊っていくのか楽しみになった。マルク・モローとのペアは、兄と弟のような、父と子のような、対比が大きくて飽きなかった。でもこれ、組み合わせで全然違って見えるはずで、他のペアも見たくなる。

なんと私はこの作品、イレールのアデュー公演でルグリと踊ったのをパリで観たのだ。今の私で当時の2人をもう一度観たい。。当時の私には豚に真珠だった。。

 

Bプロ7/29ソワレでマチアスが踊ったのは  「コム・オン・レスピール」のみ。もうねえ、マチアス不足でどうにかなりそうでした!!!とても美しい作品で、プログラムによるとフロランスが初演時に踊った作品だそうだから、特別であり彼女がダンサーに託した思いもあるのだろうが、マチアスが唯一踊ったのがこれとなると、不満が残ってしまう。もっとマチアスが観たいの。マチアスのためにチケット取ったの。と、言いたくなる。そしてなぜこのペアだったんだろう。

そもそもライモンダがダブルキャストだって知らなかったんだよ…マチネはマチアスで、ソワレはジェルマンだったのね。でもさ、もしマチネを選んでたら今度はジェルマン不足になってたでしょう?どうしたらいいのよ…。(解:マチソワ)

 

そしてプルミエールのブルエン・バティストーニがポールマルクと組んでの「くるみ」、あのPDDは鬼門と言ってもいい難易度よね。2人ともフレンチスタイルでヌレエフを踊っているから揃っててきれい。ブルエンはちょっと硬く見えたけど、これから経験を積んでいくんだろう。ポールマルクは本当に安定していて美しく、なんでもできちゃうのにやりすぎない上品さをキープしているのが素晴らしい。そうなんだよ、パリオペラ座のエトワールですからね。

 

最後の「ライモンダ」はコールドはAプロと同じで主役がハナさんとジェルマン。ジェルマンの見せ方はポールマルクとはまた違っていてなるほどそういう見せ方!となった。自分の美しさを活かす、もしかしたら疲れなどあるのかもしれないけど(猛暑だしね)、その中でも絶対に美しさは失わない、そういう安定感と貫禄があったように思う。ジェルマンにはきっちりフレンチスタイルで踊るパートナーがいいと思うのだけど、ハナさんとジェルマンだと踊りのタイプがあまりに違っていて合うようには私には見えないのだ。

でもまあ個人的な仲の良さがパートナーシップにはプラスに働くのだろうし、本人たちが楽しんで踊ることも大事ではあるよね。ガラだし。(と必死に正当化の理由を考える)

 

で、最初に書いた、この形式のガラの改善を望む面、それはズバリ、「もっと踊って!!」である。

人数やダンサーの構成による制限があるのはわかる。わかるけども、エトワールには2つずつは踊ってほしいし、今日はアクセルは最後のライモンダのコールドしか出番がない。それはさすがに寂しいじゃないか。スジェだからってファンがいないわけじゃないんだし。せっかくこの規模のグループで来たんだから、見せ場ほしいよね。Bプロ1回のみの私は結局マチアスはAプロの「ダンス組曲」と「コム・オン・レスピール」でしか観られなかった。マチアス不足は否めない。

 

あと、やっぱりパリオペでしか観られないフレンチスタイルの踊りを追求して欲しいし、見せる側もそれを自分たちの売りだと主張して欲しい。(ハナさんが日本で人気があるのはわかるけども、来日公演でハナさん推しで来られたらどうしよう)

 

コールドの存在によって際立った”オペラ座らしさ”と、個々のダンサーの魅力を発揮できる演目と、その両立を望むのは贅沢だろうか?

とてもいい企画だと感じたので、ぜひ練って再演してほしい。

 

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