アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

パリオペラ座バレエ団 『ラ・バヤデール』≪L'Opéra chez soi≫

泣いたーー。

 

パリオペラ座オンライン中継 ≪L'Opéra chez soi≫ 第一弾、『ラ・バヤデール』。なんと豪華な公演だったことか。(余韻)

 

chezsoi.operadeparis.fr

 

一幕ごとに主役を踊るダンサーが変わることで、エトワールたちがそれぞれいかに濃い個性の持ち主かというのがよくわかる。そして同じ作品をキャスト違いで観る意味、楽しみも伝わったのではないか。

 

一幕はニキヤがドロテ・ジルベールソロルがジェルマン・ルーヴェ、ガムザッティはレオノール・ボラック。

リハーサル映像で見る限りではドロテのニキヤがあまりに強いので、ガムザッティ太刀打ちできずにお話成り立たなくない?なんて気もしてたんだけど、本番は違った。ジェルマンの美しいソロルは戦士というより王子の気配が感じられるので、ドロテのニキヤはバランスとして強すぎるのではないか、貫禄ありすぎではないか、とやっぱりちょっと思う。しかしレオノールのガムザッティが良かった!気品ある悪女っぷりが似合ってたし、演技がとてもいい。(一幕のガムザッティは踊らないもんね)

 

二幕はアマンディーヌ・アルビッソンのニキヤ、ユーゴ・マルシャンのソロル、ヴァランティーヌ・コラサントのガムザッティ。

このキャストもとても楽しみにしていて、実際素晴らしかった!三人三様に素晴らしいのだけど、アマンディーヌにはまたしてもやられた。アマンディーヌニキヤが登場して2秒後にはもう、あああぁぁってなってた。あれを見たら罪悪感に襲われずにはいられないだろうソロル…という。なんだろうねアマンディーヌのあの内からこぼれ出るかのような表現。悲しみでいっぱいの前半から、一転して現実逃避したかのような、いや現実を拒絶したかのようなニキヤ。そしてめっちゃ後悔しまくっているユーゴソロル。濃密な二幕。

二幕は主役以外にも見どころが満載。ストーリーとは関係のない踊りが続くと退屈してしまうこともあるんだけど、パリオペではそこかしこが「さすが!」となり退屈する暇がない。

 

この幕間では、パリオペラ座の底力を見たような気持ちになり感動で打ち震えてしまった。その上さらに三幕ではミリアムとマチアスが登場する!

 

三幕、ミリアム・ウルドブラームのニキヤとマチアス・エイマンのソロル

冒頭のソロルでさっそく泣いてしまった。マチアスが踊っている、そのことですでに泣いてしまう。ヌレエフを見事に踊りこなすテクニックと美しいライン。端正な踊りと佇まい。なんて特別なダンサーだろう。

そしてミリアム。神々しい。ミリアムの踊りが映像として残って本当によかった。三幕にミリアムというのも大正解でさすがオレリーよくわかってる!(もちろん全幕見たいけど)このミリアムとマチアスという奇跡的に神々しいペアによる幻想の世界。この世のものではない、文字通りそうで、極め超越した存在。なんて尊い。。。

 

三幕はその大半を泣きながら見ていた気がする。そして、はあー終わっちゃったーーとなったところに舞台上に誰か出てきた!え、中継してるから挨拶?なんて思ってるうちに「ポール・マルクをエトワールに任命します」と!!!びっくりして叫んでしまったよ。(真夜中)

まさかこの1回限りのオンライン中継の公演でしかもブロンズ・アイドル役でのエトワール任命!

ポール・マルクはいずれエトワールになるんだろうと思ってたけど(昨今の配役のされ方などもね)、まさかそれがこの公演でとは。たくさんの観客や家族や親しい人に囲まれての任命が理想的なのかもしれないけど、オンライン中継で世界中のパリオペファンに見守られ、映像にも残って、ある意味とても2020年らしい任命と言えるのでは。

彼の踊りはとてもエレガントで美しくパリオペらしい。一方でエトワールとしては華がもう少し、でもあったと思う。この任命が自信と華を与えてさらに輝くんじゃないだろうか。まだ23歳と若いエトワールの誕生。Félicitations Paul !!🌟

 

濃厚な本編に加えて最後にとっても大きなサプライズまであって、なんと豪華な3時間だったことか。11.90€、安すぎ!!

 

7日間観られるのでいっぱい見ようっと。