アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

英国ロイヤルバレエ団『うたかたの恋 -マイヤリング-』in シネマ

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ロイヤルバレエの今シーズン開幕、初日の舞台『マイヤリング』の映画館ライブ中継、のディレイ上映。作品の上演前にオヘア監督によるエリザベス2世への追悼のメッセージとオーケストラによる国歌の演奏があった。”ロイヤル”バレエだもんね。

 

cast sheet  

 

ロイヤルのシネマ中継でとてもよいのがダンサーやコーチらのインタビューが多用されていること。特に今回はエドワード・ワトソンが主演の平野さんのコーチだったことでルドルフというキャラクターや自分が演じた時の話、新たな世代に伝える責任などについて語っていたのがとても興味深く、それだけで見る価値があった。エドいいよねえ、エド。(踊ってない)

 

エドがコーチしてのリハーサル風景や、平野さんの考えもインタビューでよくわかるし、カンパニーの中での平野さんの信頼度の高さが伝わる。ロイヤル得意の演劇バレエ、”演技力”がものを言う。表情、しぐさ、目線、など。ルドルフの好みは様々だと思うのだけど、平野さんは体格が良いからルドルフの暴力性が際立って見えて私にはちょっときつかった。インタビューで平野さんは「安全であること」が大事だと語っていて、「暴力的に見える=実際に暴力的である」わけではないことは重々承知しているのだけどそれでも、ちょっとこういうの見る耐性が弱まっている気がする…私の側の問題だが…。

今回の”演技”の面をどう見るかというのは、バレエの何に心動かされるか、何に心動かされたいかで好みが分かれる気はする。今回の上映はかなり好評のようなので、来日公演で『マイヤリング』やってくれるといいなあ。それでいろんなルドルフを観たい。

 

ルドルフのまわりの女性たちはキャスティングが豪華で、フランチェスカの演技力は素晴らしかったし、ネラ様は余裕だし魅力満タンだし、そしてオシポワのマリー!

すごかったなー。まだ17歳なのに他のどの女性とも違うマリー。野心、どろどろと渦巻く内面、あの壊れたルドルフに共鳴する強さ、度胸、陶酔などを見事に表現してた。そしてそもそも17歳に見えるのがすごい。

 

初日だったからか、いくつかトラブルがあったような気がするが、まあ生の舞台ですからね。動じないダンサーの皆さんはさすが。

 

マクミラン作品はロイヤルの十八番だしこれを演じるために育てているようなところがあると思うのだが、初演が1978年だなんて信じられないくらい今なお斬新だし衝撃的。単に振付が良くできているというだけではなくて、その時その時のダンサーたちによってアップデートされているから古くならないんだと思うんだよね。

 

そしてこれがパリオペのレパートリーに入ったわけだが、さぞかし別物だろうなあと思いながら観た。つい考えてしまって。パリのルドルフたちはこうはならないだろうな、みたいな。どちらがいいとかではなくて。パリに日本から観に行っていた人も多かったので、見比べできる方うらやましい。

 

しかし観る方も体力必要よね、この作品。だいぶ消耗したよ。

 

キャスト:

ルドルフ皇太子(オーストリア・ハンガリー帝国皇太子):平野亮一
マリー・ヴェッツェラ(ルドルフの愛人) ナタリア・オシポワ
ラリッシュ伯爵夫人(エリザべート皇妃の侍女でルドルフの元愛人):ラウラ・モレ―ラ
皇妃エリザベート(ルドルフの母):イツィアール・メンディザバル
ステファニー王女(ルドルフの妻) フランチェスカ・ヘイワード
ミッツィー・カスパー(高級娼婦でルドルフの愛人):マリアネラ・ヌニェス
ブラットフィッシュ(ルドルフのお気に入りの御者):アクリ瑠嘉
フランツ・ヨーゼフ皇帝(ルドルフの父):クリストファー・サウンダース
ベイ・ミドルトン(エリザベート皇妃の愛人):ギャリー・エイヴィス
ハンガリー将校:リース・クラーク、カルヴィン・リチャードソン、ニコル・エドモンズ、レオ・ディクソン

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