アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス

フレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリー映画、「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」(Ex Libris: The New York Public Library)

《Ex Libris》はラテン語なのね。蔵書、蔵書票。

 

映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』公式サイト

 

圧倒的な知の収集、蓄積量。そしてその共有、育成。私の知ってる図書館とは全く違った。本編の中にも「図書館は単なる書庫ではない」といった発言が出てきたけど、とにかくこのNYPLの多機能なこと!予想のはるか上をいっていた。なんと豊かで知的で、利用できる人たち幸運。

 

映画の構成は、NYPL幹部たちの白熱のミーティング場面、NYPLの様々な部門の表(利用者)と裏(スタッフ)、各地域にある分館での活動、NYPLで開かれているさまざまなイベント、が次々に登場する。

 

この映画、途中休憩を挟んで3時間半ほど。長い!しかし長くなるのも納得。この図書館、半端なく多機能。家にネット環境がない人のために機器の貸し出しもする。ホームレスのために図書館に何をできるか考える。まさに「公共」。

 

市民向けのプログラムの多様さも凄い。作家を招いてのトーク、朗読会、読書会、演奏会、ダンスなど子供から老人までまんべんなく参加の場が用意されている。エルヴィス・コステロも呼んじゃう。内容の豊富さもさることながら、講座の講師も参加者もみんな喋り上手で感心しちゃう。老若男女、生徒も先生もみんな堂々としていて、物おじしないってほんと気持ちいいよな!日本だと大学の先生でもあんなにうまく講義できる人どれくらいいるかしらとか考えてしまった。

 

地域に密着した分館では、その地域ごとの事情やコミュニティが抱える問題に応じたプログラムを考え、できるだけ多くの人を図書館に呼び込むための策を練る。

 

こんな図書館が近所にあったら絶対通うのに!と思うと同時に、それでも、近所にあってどれほどオープンであっても足が向かない人というのは必ずいて、そういった人たちとどう接点を作れるか、いやでもどうやっても全員とは作れない、でも全ての人のための存在である、というその日々。

 

で、それらを実現するための資金はニューヨーク市と民間の両方から出ていて、NYPLの幹部たちは市や政治家への働きかけを常に検討。100%依存でなく民間からの資金もあるからこそ市への発言力も増す。そこがヨーロッパや日本と違うところで、その運営の自主性と信念の高さは圧巻。これはもうどうやってもかなわないなと、日本の現状を考えると悲しくもなる。知へのリスペクト、知を育てる自負、そして知は万人が平等にアクセスできるべきという高い理想。あらゆる面でレベルが違い過ぎる。

 

図書館とは民主主義の根幹だ、と言えるの羨ましい。

 

本編205分、知に圧倒されめちゃくちゃ疲れた。

 

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