アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

英国ロイヤルバレエ団『ロミオとジュリエット』in シネマ(2018/2019)

泣いたーーー。

 

マシュー・ボールとヤスミン・ナグディ、ロイヤルの若いプリンシパル2人によるロミオとジュリエット。やっと観れた!

 

1幕のマシューロミオのすばらしさよ。。。(涙)

もちろん実年齢の若さも助けになっているのだろうけど、あれだけ自然体(に見える)でロミオの子供っぽさ、恋に落ちる様、恋に落ちてからのロミオの変化を表現しているのが素晴らしくて、まさしくロミオそのものが現れた感。リアルな人物像としてそこにいる。セリフが身体から溢れていて、キラキラしていて甘くキュートで、観客もみんなジュリエットと一緒に恋に落ちる!(笑)

でもきっとあれは素で出来るのではなくて、パートナーや指導者らとの緻密なリハーサルと考え抜かれた役作り、そしてテクニックがあって実現されているのだろうなあ。(と、後になってしみじみ考えるとそう思う)

それにしてもマシューロミオはまり役。

 

ヤスミンのジュリエットは本当に若く幼くて、そんな彼女がいきなり結婚だなんて見ていてほんとに痛々しくなる。テクニックに全く不安がなくてパが正確で丁寧で、それがまだ大人になってない世間知らずの純粋さに見える。もっと大人っぽいキャラのダンサーかと思ってたけど、見事にジュリエットであった。あと、ヤスミンの演技で結構笑いが起きてたよね。以前観たサラのジュリエットはもっとシリアスな印象だったからちょっと意外だった。

 

舞踏会で2人が出会い、恋に落ち、初めて2人で踊るとこまでが本当に素敵で。。。あの瞬間の心の動き、2人のときめきにこちらまでドキドキ。バルコニーのPDDでの初キスに至るまでの過程が本当に丁寧に描かれている。

 

3幕寝室のPDDでロミオの苦しい気持ちをあそこまで表現しているというのも特徴的だったように思う。ジュリエットと過ごした夜の幸せな余韻よりも、この先の困難を見据えている。そしてロミオが去ったあと、ジュリエットがあの決心に至るその心の動き。それを踊らずに、ベッドに座ったままで表現する凄み。

ロミオとジュリエット」が現代でも多くの観客に受け入れられるのは、ジュリエットを現代的ともいえる女性として描くことができるから、という面もあるのではないか。家や親に決められた人生に抗い、自分の意志を貫く強さを表現できる。誰でも自分の若い頃の恋や葛藤、社会的なしがらみなどを重ねることができる。ダンサーにとってもきっとそうで、かつての”理想の女性像”を演じるのではなく、もっと身近な人間でいられる。

というようなことを思ったこの寝室の場面。

 

墓地で眠るジュリエットの傍らに横たわるロミオ(泣)。毒薬の瓶を口で開ける。(片手はジュリエットの手を握っているので)

なんかそういうところはロミオになりきっているからこその素の必死さに見えてまた涙。目覚めたヤスミンの慟哭、そしてナイフ。。

あれほど「ポーズを決めること」を嫌ってたマクミランなのに最後の最後だけは「形」に見えるんだよね。なんでなんだろうな。それにしてもなんというドラマ。。。

 

久しぶりに観たけどロイヤルのロミジュリの厚みはさすがで、主役・ソリストのみならず舞台上の隅々までみんなが役を生きている、だからこそ観客は物語の世界に入り込める。メイクや衣装、舞台装置、武器などの小道具までさすがのクオリティ。

 

ロイヤルの映画館上映は解説やリハーサル風景、裏方やゲスト(今回はフェリ)の話が聞けて作品やバレエ団への理解が深まるのがとてもいい。来シーズンも楽しみ。

youtu.be

 

キャスト:

ジュリエット:ヤスミン・ナグディ
ロミオ:マシュー・ボール
マキューシオ:ヴァレンティノ・ズケッティ
ティボルト:ギャリー・エイヴィス
ベンヴォーリオ:ベンジャミン・エラ
パリス:ニコル・エドモンズ
キャピュレット卿:クリストファー・サウンダーズ
キャピュレット夫人:クリスティナ・アレスティス

 

詳細キャストはロイヤルのサイトに。

Romeo and Juliet — Cinemas — Royal Opera House

 

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ロミオとジュリエット | 「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」公式サイト