アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

パリオペラ座バレエ団日本ツアー2020『ジゼル』

Ballet de l'Opéra national de Paris Tournée au Japon 2020

≪Giselle≫

Giselle : Dorothée Gilbert
Albrecht : Mathieu Ganio
Myrtha : Hannah O'Neill

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「ジゼル」/パリ・オペラ座バレエ団 2020 NBS日本舞台芸術振興会

 

パリオペラ座バレエ団日本公演『ジゼル』、初日2月27日の主演はドロテ・ジルベールマチュー・ガニオ。ミルタにオニール・八菜、ヒラリオンはオドリック・ベザール。

 

昨年12月から始まったパリオペのストライキコロナウイルス対策のイベント自粛要請と、本当にやるのかと当日までやきもきし通しだった今回の日本公演。祝・初日!

 

パリオペの皆さん来てくれてMerci!!! そしてNBSも決断の難しい状況の中で開催ありがとう!色々な意見があるでしょうが、中止してもしなくても批判はあるだろうことが想像に難くないので、今回はやって正解だと私は思う。根拠や効果の示されない中での公演中止の連鎖に少しでも抗いたい。

 

先日までのパリでの公演でもドロテのジゼルは絶賛されてたけど、今キャリア熟成の時にあると思われるドロテのジゼルは完成されている。素のキャラだと1幕が似合いそうに見えて(実際似合うのだが)、2幕がさらに素晴らしかった。なんだあの説得力は。アルブレヒトはほんとひどい男だけど、ジゼルがいいと言うのなら、それでいいよ…みたいな気持ちに。

 

マチューアルブレヒトの1幕はジゼルに対してとても生身の人間で、絶妙の加減の強引さでジゼルに迫ったり、ジゼルの可憐さにうっとりしたり、憎めないやつ。しかし大公とバチルドがやって来た途端に「君らとは違うから」と貴族の高慢さが顔をのぞかせる。狂乱のジゼルに自分の身勝手さにそこで初めて気づき、でもそれを否定する、いや、でも、、、ああああーーという心の動きが手に取るように。「アルブレヒト、お前が悪い」と会場の全員が知ってるのにそれでも愛されなくてはいけないって、難しい役だね。(笑)

 

マチューアルブレヒトはジゼルたち村人みたいに振る舞うのが楽しくて仕方がなかったのかもね。自分には貴族としての決められた生活があるわけだけど、そこから解放されて心から楽しんでいた。アルブレヒトにとっては”村人ごっこ”だったのかも。それがまさかこれほどジゼルを傷つけることになるなんて、とあの場面で気づき慄く。

 

ドロテジゼルはそんなアルブレヒトを「許す」というより、「あなたはただ楽しく幸せに暮らしたかっただけなのよね…わかってるから…」みたいな。

 

なんか違う話になってきた。

 

 

来日演目がライモンダからジゼルに変更になり、なぜ今更ジゼル、などと散々愚痴っていたのだけど、久しぶりに観るとパリオペがやるとジゼルもこうなるのだなあと、なんか納得してしまってちょっと悔しい気もする(笑)あと、マチューは一部振付の難易度下げていたように思う。その場の流れに違和感ないからまあいいんだけど故障など抱えてないといいが。

 

主役以外のソリストではフランチェスコ、ナイースがよかったな。2幕冒頭の、暗い中でのミルタの人間じゃない感もよかった。そしてヒラリオンにオドリックはもったいなすぎる。宝の持ち腐れ。

 

今回の来日公演プログラムに、

テオフィル・ゴーティエ、文学からダンスへ」

「絢爛たる振付 ―プティパが伝えた『ジゼル』の舞台」

という解説が載ってて、なんだこの読み応えは?誰が書いたんだ?と思ったらパリの公演プログラムから翻訳されたものだった。よい。

 

ジゼルのあらすじに「村の人々はジゼルを祭りの女王に選ぶ。」とあって、先日見たばかりの映画『ミッドサマー』を思い出してしまったよ。

 

パリオペ全幕観るの久しぶりすぎてバレエ脳がフル稼働するのに時間がかかった気がする!別キャストでも観るのでコールドなど全体については改めて。

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