アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

パリオペラ座バレエ団日本ツアー2020『オネーギン』

パリオペラ座の日本公演も後半。オネーギン初日。

 

Ballet de l'Opéra national de Paris Tournée au Japon 2020

≪Onéguine≫

Eugène Onéguine : Mathieu Ganio

Tatiana : Amandine Albisson

Lenski : Germain Louvet

Olga : Léonore Baulac

Le Prince Grémine : Audric Bezard

 

2020年3月5日19時

オネーギンはマチュー・ガニオ、タチアナはアマンディーヌ・アルビッソン。

レンスキーとオリガはジェルマンとレオノールという可愛いカップル。

 

またしてもアマンディーヌに泣かされたー。

夢見がちな文学少女が鏡の中にオネーギンを見て、恋に落ち、妄想全開で手紙を書き、そして打ち砕かれる。そのどの場面においても演技が素晴らしく台詞が聞こえてくるかのよう。ジゼルもそうだったけど、この現実を離れて夢想する感じが、アマンディーヌにとてもはまっている。

 

そしてマチューオネーギン。この人のオネーギンはシュツットガルト来日公演のゲストで踊った時に観ていて、当時超感動したのだ。

【東京】シュツットガルトバレエ団『オネーギン』 - アートなしには生きられない

 

そして今回、前回とはまた違った感動があった。ホームであるパリオペでのオネーギンだし、なんといってもパートナーがアマンディーヌ。

美しく、なんでも持っていて、でも人生には退屈しているオネーギン。「まったくこれだから田舎者は」「そんなのの何がおもしろんだろうね、理解できないよ。まあ僕には関係ないけどね」と言っている。私には聞こえたぞ。

前回は、孤独過ぎるがゆえに心を開けないオネーギン、というように見えたのだけど、今回は心の闇度が違っていて、より心が凍ってる。

 

しかし、マチューといいアマンディーヌといい、深い心理を身体で表現する力が凄いよな。2人とも超美しいダンサーなんだけど、若い頃はそこまで感動することはなかった気がする。特にマチューは美し過ぎるが故の難しさがあったのではないかと勝手に思っていて、それが30代半ばに差し掛かったあたりから、立っているだけで語るように進化している気がする。(素人が勝手なこと言ってデゾレ)

 

さてレンスキーとオリガのジェルマンとレオノールははまり役でとても良かった。かわいいかわいいで生きてたのが、オネーギンの登場で突然日常が壊れてしまう。それまで人生について深く考えたことがなかった若者たちが、突然、悲劇に直面する。ジェルマンは少年のようなので、オネーギン役は今は想像つかないけど、いつか踊ることになるんだろうな。にしても、マチューとジェルマンが決闘だなんて、ねえ。なんという不幸。

 

マチューオネーギンのジェルマンレンスキーの煽りっぷりがとってもフレンチで超リアルだった。オリガと踊りながらレンスキーどつくところ。やはりこう、表情の作り方とかジェスチャーに出るよね。きっとマチュー個人はそんな失礼なことしない人だと思うけど。(笑)レンスキーの怒りが溜まっていく様、そして爆発してしまう瞬間。すぐに後悔してももう遅い、引くことはできないのだ…名誉のために…。そんな時代じゃなくてよかった。

 

決闘後、自分がしてしまった大きな過ちの重さに打ちひしがれるオネーギン。壊したのはレンスキーの人生だけじゃない。

 

3幕はオドリックのグレーミン公爵と優美なアマンディーヌタチアナが、オネーギンが”失ったもの”そのもの。10年さすらって枯れているオネーギンにはきっと、まぶし過ぎた。まぶし過ぎてまともに見られない。ちらっと振り返ったり、柱の陰から覗いたり。1幕の面影ゼロ。そんなオネーギンがやむにやまれず勇気を振り絞ってタチアナにせまる。

 

私、マチューとアマンディーヌの、役を生きている且つ生身の人間、というのが見えるところに猛烈にやられた気がする。うまく言えないんだけど。

 

それにしても今回の日本ツアー、アマンディーヌに予想外に泣いているぞ。しあわせ。

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