ドランの新作公開。
ある時映画館でポスターを見かけ、その後何度か劇場で予告編を見たけど、正直そこまで惹かれていたわけではない。前作≪Juste la fin du monde≫『たかが世界の終わり』がやや拍子抜けだったこともあり、実はあまり期待はしてなかった。
私にとってのドランの衝撃は、≪Laurence Anyways≫『わたしはロランス』(2012)、そしてなんといっても≪Mommy≫『Mommy/マミー』(2014)。この2本は今も強いインパクトで記憶に残っている。Mommyで3人が歌い踊るセリーヌ・ディオンの≪On ne change pas≫と、最後のラナ・デル・レイの≪Born to Die≫は、ボロボロに泣いた場面。
どちらの作品も自分に近い設定の人物が出てくるわけじゃない。でもそこに描かれているマイノリティの心の叫びが、めちゃくちゃ響いた。もうね、ほんとに、わかりすぎた。
あの若さであれほどの作品を作ってしまったドラン。毎作自分自身が深く投影されているので、この「ジョンFドノヴァン」を観て、これまたドランのもがきを感じた。アーティストであるということ、”ギョーカイ”人であること、有名人としてのメディアやファンとの関係、やるべきことやらざるべきこと、しかしこうありたい自分、そうはいられない自分、そもそも自分とは、etc....
そして母と息子の関係の描き方も様々。ドラン作品に出てくる母親っていわゆる”いい母親”はいないので(笑)、(現実に母親である人が見てどう思うのかというのはちょっと興味はあるけど)今回はナタリー・ポートマン演じるルパートの母にイライラしてしまい、ジョンの母もちょっとアレだし、ある意味ドランは”母”を母親だからといって神聖化していないというか、あくまで一人の人間だとあえて描いてるところがあるのかもな。だって、当たり前だよね。
ジョンの闇を考えると胸が痛いな…。ジョンもルパートもドランの分身のようにも見えるし。
本作は撮影は2016年から2017年にかけてで、公開が2018年なので日本は公開遅すぎね。
すでに2019年10月に公開されてるドランの最新作≪Matthias et Maxime≫ではドラン自身がマキシムを演じているそうだ。観たい。