アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

パリオペラ座バレエ団『ノートルダム・ド・パリ』

パリオペラ座、無観客で行われた公演≪Notre-Dame de Paris≫が早くも放送に。

Merci, NHKプレミアムシアター!!!

 

ローラン・プティの≪Notre-Dame de Paris≫と言えば二コラのアデューの作品。一夜限定の特別公演はあったけど、全幕ものとしては二コラは最後の作品にこれを選んだ。そして私はそれをパリで観たのだった。あれは2014年なのでもう7年前なのだね。

 

あれ以来この作品は生でも映像でも見ていなかったので、久しぶりに見たら覚えてないことがたくさんあり自分の記憶力のなさに愕然としたのだけど、なによりも、このキャストで収録し、さらに放送してくれたことに感謝感謝。

 

それにしてもアマンディーヌの美しさよ…。あの力強い脚。語る脚。雄弁さが半端ない。登場の場面とかもう、輝かんばかりのオーラで舞台上を支配している。これぞエトワール!!!という感じ。圧倒。

パリではアリスとアバニャートで見ているのだが、ほとんど記憶に残っていない。同じ役なのに信じられないことだけど。

ここ最近のアマンディーヌの輝きはすごいものがある。白鳥、ジゼルといった古典からプティやノイマイヤー、フォーサイスなどまで、どれで見ても素晴らしいではないか。キャリア黄金期か。

 

アマンディーヌの身体にほれぼれとしてしまう。バレエダンサーの身体はそれ自体がアートだと思うが、エトワールの、それも全盛を誇るエトワールの身体というのは芸術そのものだなあ、という思いを強くする。一歩出しただけで語る脚、というところまで到達するのにどれだけの年月と訓練の積み重ね、そして人間性の豊かさがあることか。

 

同じことをマチアスにも思う。マチアスのフロロはその人間性や感情の動きが強く感じられるので物語が明瞭。葛藤、迷い、決断、冷酷さ。現代的に考えるとフロロという人間には軽蔑しかないけど、マチアスのフロロには人間味が濃く表れてて凄い。スマートで、キレキレで、内面はドロドロしている、そこについ魅力を感じてしまうというか。そういうところまで、マチアスの踊り、音楽性が観客を持っていく。

 

で、フロリアンのフェビュスなんだけど、これもまた見事だと思うのよね。現地で見た時も同じくフロリアンだった。この役って、フロロとの対比としていかにも俗っぽく軽薄で、でも魅力があり女性にモテてしまう、それゆえにフロロの憎悪が爆発してしまう、というそのための存在であり、フロロの感情が爆発するほどの存在でないといけないわけで。そして殺される、でもそこが一番の悲劇ではない、という。

 

そしてカジモドのステファン。アマンディーヌとマチアスが私にとってあまりにも好みなために若干霞んでしまったのだけど、今のオペラ座でこういったキャラクターを演じられるエトワールといえばやはりステファンしかいないかな。優しいカジモド。

コロナ禍のせいで「マイヤリング」がキャンセルになってしまって本当に残念。。ステファンのルドルフ見たかったよ。。

 

■パリ・オペラ座バレエ 「ノートルダム・ド・パリ」
  バレエ「ノートルダム・ド・パリ」(全2幕)
  振付・演出:ローラン・プティ
  音楽:モーリス・ジャール
  原作:ヴィクトル・ユゴー

  エスメラルダ:アマンディーヌ・アルビッソン
  カジモド:ステファン・ビュリョン
  フロロ:マチアス・エイマン
  フェビュス:フロリアン・マニュネ ほか
  パリ・オペラ座バレエ団
  管弦楽:パリ・オペラ座管弦楽団
  指揮:ジャン・フランソワ・ヴェルディエ  

2021年3月30日・4月1日パリ・オペラ座バスチーユ

 

2014年のパリでは、メモによると以下の2キャスト見ている。

二コラ/アバニャート/ジョシュア/フロリアン

ステファン/アリス/オドリック/フロリアン

 

が、二コラのアデューとジョシュアのフロロの鮮烈な印象は記憶に残っているものの、記憶ってなんて儚いのかしらと、今回の放送を見てショックを受けた。あの時の公演プログラムを探しだしたい。うちのどこかにはある。今回あらためて映像で見て、もうちょっと作品を理解したいと思った。

 

これからは何か見たらもうちょっと詳しくメモを残しておかないとな。将来の自分のために。

 

ちょっと思い出したのだけど、先日のパリオペ新作バレエ「赤と黒」、こちらの動画はWBDで公開されたファーストキャストによるステージリハーサル。

youtu.be

マチューの怪我により映画館中継のキャストは変更されてユーゴとドロテのペアになったのだけど、その動画が一時的にアップされていたのを見た。(現在は削除されている)

この時つくづくファーストキャストで観たかったなあ!と思ったのよね。ラコットさんはマチューを念頭にあの役を作っただろうし、アマンディーヌ、ミリアム、ヴァランティーヌと共演ダンサーも豪華だった。若手も若手の魅力があって良さがあるのはもちろんだけど、でも1度しか見られないならやっぱりファーストキャストで観たかった。これがアマンディーヌだったら、ミリアムだったら、とつい考えてしまったんだよね。

アマンディーヌはきっとああいったドラマを見事に演じただろうし、ミリアムはあの役に深みを与えただろう。

通える距離なら全キャスト制覇したいけど。(いやでも赤と黒は正直リピート辛そう。。)