アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

歌舞伎座 五月大歌舞伎『春興鏡獅子』

緊急事態宣言下で再開した劇場。歌舞伎座も五月大歌舞伎は12日が初日に。開いたとはいえ行くのかなり迷った。ぎりぎりまで迷った。が、行って良かった。

 

 

菊之助の『春興鏡獅子』はどうしても観たかったのだ。菊之助さんの踊りが好きなのと、若い娘の踊りと雄々しい獅子の精の二役が一度に見られる。最後は毛振りで盛り上がる。

 

しかし今日は踊り始めのお辞儀のところでもう気持ちが高ぶって大変だった。さあ今から踊りますよ、という挨拶。期待MAX。

日本舞踊を自分がやったことがないので難易度はわからないんだけど、私はバレエを習い始めてから歌舞伎でも踊りの演目が好きになった。重心の移動や視線、顔や首の角度や指先の表現など、踊りで大事なことというのは共通点も多いのではないのかな。手法は違っても。

日舞を習ったらより楽しめるかなとちらっと考えたんだけど、お稽古するために着物を着るのはムリだ…となったので私には厳しそう。

 

最近はたいていの場合イヤホンガイドを借りることにしているのだけど、今日は「ちょっと黙っててくれる!?」ってなるくらい踊りに夢中になってしまった。

借りておいてすいません、いろいろ勉強になってます。(笑)

 

立ち役も女形も日ごろから演じている菊之助ならではのどちらもハイレベルでバランスの取れた弥生と獅子の精なのでは。素人目だけど。ちょっとどちらも凄すぎて驚異的と思った。

若い娘弥生の踊りはもういかにも若い娘のという雰囲気に溢れているし、それでいてあの長い踊りは相当に体力も必要なんだろうな。バレエと違って低い重心での見せ場が多く、脚にきそう。

幸四郎さん、猿之助さんなどと共にこの世代の踊りは身体能力と芸の力が両立してて見てて浮き立つような気持ちになる。

 

胡蝶に丑之助(7歳)と亀三郎(8歳)が配役されていて、あの年齢であんなに演じられるのねえ、どれくらいお稽古したのかしら…となるのだけど、やや複雑な気持ちにもなるんだよね。かわいい、頑張っててえらい、みたいな消費の仕方をしていいものかと、考えてしまう。世襲の世界ゆえよなあ…、幼さ、未熟さを愛で、成長していく様を見守るという構図。

赤の着物に小鼓や鈴を持った踊りは、将来いつの日か道成寺を踊ったりするんだろうなあ、と思わせる。そういう世界。

 

歌舞伎の演目は「おいおい…」ってなる話も結構あるので最近はかなり選択してるんだけど、踊りの演目はいいわあ。

 

これほどの舞台なのに販売座席数を制限してるのと、緊急事態宣言が出てる中ということもあり客席がさみしい。大向こうがないことにも慣れてきてしまった。

一幕見席があれば通いたいところだけどそうもいかず、悲しい。

でも、とりあえずは劇場を開けることができてよかったのかな。全休はつらいよね。

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