アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

国立劇場 初春歌舞伎『南総里見八犬伝』

新春のお約束、国立劇場菊五郎さん一座へ。

www.ntj.jac.go.jp

 

ちょっと歌舞伎鑑賞教室のような始まり方(国立劇場だけに)だったけど、長~いお話を短く(と言っても4幕ある)まとめるための工夫としてはありだと思う!声もいいし!(菊之助

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松緑菊之助、彦三郎といった世代が、動けるし華もあるし実力もあるという満足度の高いお芝居。菊之助、”麗しき若侍”が似合いすぎ。かっこよすぎ。

菊之助さんは女形ももちろん美しいのだが、こういう美男役を見ると毎度「うわー!歌舞伎役者ー!美形ー!」ってなってしまう。

 

松緑さんの親子共演もよかった。イヤホンガイドによると左近さん16歳とのことで、徐々に大きい役を担うようになってきた将来が楽しみな若手俳優と紹介されていた。どんな俳優になっていくのでしょうか。

彦三郎さんの小文吾がまたよかったなあ。なんか好き。愛嬌といい声。

 

舞台写真が公開されてた。

【初春歌舞伎公演】『南総里見八犬伝』好評上演中、27日まで!(舞台写真あり)

 

初春歌舞伎では時事ネタを取り入れた笑いがお決まりで、今年は「どろん」と、とても上手い取り入れ方だと思った。ああいうの、誰が考えてるのかしら。歌舞伎ってほんと柔軟。

 

国立劇場のHPに載ってる菊五郎さんのコメントに

このお正月の国立劇場の舞台を面白く創り上げて、お客様が「また歌舞伎を観たいな」「これからもずっと歌舞伎を観よう」という気持ちになっていただけるような作品にできたら一番良いと思います。

とある。私が日本にいる時はほぼ毎年初春を国立劇場に観に行ってるのはこの気持ちになってるからだと思うんだ。作品に菊五郎さんの人柄が表れてるし、毎度笑わせてもらって楽しい気持ちになって帰る。国立劇場の初春なら必ずそうなるともう知ってるしね。

やはり座頭の人柄や姿勢が表れると思う。絶対そう。

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そして、新橋演舞場で公演中のもののことを考えてしまう。彼はどこへ向かうんだろう。歌舞伎をまだ見たことがない、よく知らない人からすると圧倒的な知名度と”名門”の肩書で彼が第一人者のような印象を持ってしまうんだろう。なんせオリンピックの開会式にも登場するくらいだし。

やりたいことをやる、新しいことをやるのがダメなんて誰も言ってないと思うんだよね。歌舞伎ファンなら。彼以外にも新たな試みに取り組んでる人たくさんいるじゃん。昔からその積み重ねで今の歌舞伎があるんだよね。彼は今の自分の名前に知名度があるその一番の理由のところを、もういいや、古いし、って切り捨てたんだろうか。だから取り組まないんだろうか。十八番とかどうするんだろうか。いっそこのまま別ものとしてやっていく方が互いに幸せなのでは…という気さえする。

でも、でもだよ、本人はいいとして息子君らは、古典の経験を積むことなくどんどん大きくなって、昔からあるやつはできないし知らないけど名前だけは立派って、最悪なのでは?本人にとって。

左近さんの成長をみてあらためて思いました。余計なお世話ですが。

 

話が逸れた。

 

ところで、歌舞伎ならなんでも好きという人は逆に少ないと思うし、私は好みの範囲が超狭いと自覚あり。年末年始にEテレで放送した歌舞伎関連録画を見ても、「うわあ、このじっとりした感じムリ」となったりした。

 

歌舞伎の今後に大事だと私が個人的に思うのは、昔の話ではあっても、昔の感覚そのままに再演するのはもう客側が受け入れにくくなっていくと思うんだ。菊之助さんたち世代が、役者と同世代やそれより若い客を呼ぼうと思ったら、もはや厳しい演目も結構あると思う。というか、そう判断してほしいものがあると思っている。彼らが今の大幹部と同じものばかり選択をするというわけではないだろうけど、わざわざお金を払って不快な気持ちにはなりたくないので、アップデートはしていってほしいな。

 

今月は歌舞伎座も観に行きたいけど、第六波の状況も気になるところ。国立劇場はほぼ全席売ってるようなので、今日もなかなかの入りだった。いいことだけど同時に密集は気になるよね。

客席での飲食はダメで、無料の休憩スペースが2階3階に作られてる。売店での飲み物は客席に持ち込み可能だった。

全4幕で休憩3回。約3時間半。(休憩込み)

 

劇場が閉まるような事態には二度となってほしくない。みんなで気を付けようね。