アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

秀山祭九月大歌舞伎 夜の部

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いつ以来だろうか、歌舞伎座。すっかり足が遠のいていた。幕見が復活しているのをすっかり忘れていた。予約もできるようになったんだね。

吉右衛門さん三回忌追善なんですって。過去のポスターが飾られていた。さみしいね。。

 

今回は『連獅子』目当て。菊之助と丑之助による初の連獅子。これは観なくてはと思っていたのだけど、丑之助(9歳)の左近が鳥肌もので。彼は以前からもはや子役ではないと思ってたけど、教わったことを披露しているというのではなくて、既にちゃんと自分の意志が明確にあり、役を演じていて、表現が伝わる。9歳にして踊りから伝わるのすごくないか。

 

菊之助の踊りが好きなのは、特定に役に限らず全体の印象として、過剰にじめっとしていなくて、やりすぎず、静謐さがあって美しいところ。

連獅子では「親子の情」みたいなのが強調されがちな気がして、でも菊之助はそこをこれ見よがしにはやらない。なかなか登ってこない子獅子が気がかりな親獅子。繊細な表現がとても好みだ。

人間ではなく獅子なのだから、人間が見てそんなにわかりやすく親子の愛情表現とかされたら冷める。菊之助と丑之助は、親獅子と子獅子それぞれの心情は伝わりつつも、親子関係というより、個々の獅子としての孤独のようなものも感じられる。そしてそれは正しいと私には思える。

 

それにしても菊之助がお手本であり先生なのだから、本人のやる気や資質にプラスして、丑之助の踊りが上手くなるのもわかるよな。そしてこの二人、この先一体どんな踊り手になっていくのだろうかと想像すると末恐ろしい。そして楽しみ。

 

『車引』『一本刀土俵入』は、私の気持ちがまったく反応せずあまり楽しめなかった。すまない、心が閉じていて。

 

歌舞伎を観に、これからも行くとは思うのだけど、社会の変化や自分の気持ちの変化、時代の変化など、そういったことによって以前はなんとも思わなかった作品に納得がいかなくなったり、わざわざ見るのどうなんだろうと思ったり、これをエンタメとして楽しむのどうなの?ってなったり、段々折り合いがつかなくなってきている気がする。前からあった気持ちではあるけど、より作品を選ぶようになってきたというか。

 

あと昼夜二部制だと、長いし、観たいのと観たくないののセット売りになったりして、ちょっと考えてしまう。今日も結構空席が目立ち、コロナ禍以前のようには戻らないのかなあと心配にもなった。

ま、私も久しぶりの歌舞伎座だったし、全然支えてないので大きなことは言えないのだけども。

 

追記:幕見で『連獅子』観に行ったよ。あの尊さをもう一度観ておきたくて。なんというか、本当に貴重なものを観た。。。