アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

團菊祭五月大歌舞伎【第二部】

團菊行ってきた。『土蜘』目当ての第二部。

www.kabuki-bito.jp

 

第二部は成田屋の家の芸『暫』と音羽屋の家の芸『土蜘』の合わせ技。團菊祭ではあるのだけど、”團”と”菊”の共演はない。ないというか、できないのかなとも思う。いじわるな見方をすれば、『暫』という他人と比較されないものだから出たんだろうなと。誰からもダメ出しされないだろうし。もはや自分の好きなようにやっているんだろうなと見える。それがそのまま演目・役柄にも表れてて、海老蔵演じる鎌倉権五郎が唯一の圧倒的主役であり、舞台上には何十人という役者が並んでいるのだけどそれもすべて鎌倉権五郎の引き立て役。そういう演目を選んでいるところが、”らしさ”というか、大仰なこしらえと相まって滑稽にすら見える。彼を見るのは久しぶりだったけど、予想以上に冷めてる自分がいた。(素人が好き勝手言ってすいませんね、でも客が感想を言うのは普通のことなので)

 

さて、休憩を挟んで『土蜘』。初見ではないのだけど(多分松緑さんで見てる)ひさしぶりで新鮮な感じ。松羽目物での菊五郎さん、発声がよい。世話物の時と全然違うよね、使い分けというか。そして登場人物の多くがセリフではなく踊りで語る場面があるのがおもしろい。イヤホンガイドは色々教えてくれるのでほんとおすすめ。美しい紅葉が川面に落ちて、とか、雪の中を歩く様子、とか。松羽目物なので衣装が能の形だと本当に踊りにくいそうで(胡蝶の時蔵さん)、踊り手の技量が試されるそうだ。

そして音もなく現れる智籌(菊之助)。そしてこれもまた発声が凄い。鳥肌立った。怪しい。そして美しい。さらに太刀持ちの丑之助くんね、もう何度も見てるから驚かないよ、ほんとによくやっている。毎日同じ舞台上で菊五郎菊之助を見ているのだから、いろんなことを吸収してるんだろうなあ。

「実は土蜘の精」みたいなの、とても歌舞伎らしくて好きなんだ。他ではなかなか見られない設定(笑)。この土蜘の精となった菊之助さんをまじまじと見ながら、(あの小姓弥生(春興鏡獅子)と同一人物とは思えない…)みたいな。芸の幅広すぎ!そしてそれはちゃんと稽古に裏打ちされた芸なのだよね…。

 

いろんな意味で対照的な二演目。いろいろ考えずにはいられない。

 

2016年の團菊の時書いたやつ。↓

cocoirodouce.hatenablog.com

 

 

一応、今日は三階席だったので花道があまり見えてない。来週もう一度観に行くので、一階から見ても同じような感想になるのかどうか、確かめてこようと思う。

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