アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

パリ・オペラ座バレエ団『ロメオとジュリエット』

マチアスとミリアムの『ロメオとジュリエット』、このペアで収録してくれて本当にありがとうーーー(涙)そして放送してくれてありがとうプレミアムシアター。

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ちゃんと全幕で観るのが久しぶりすぎて、こんな場面あったっけ、こんなセットだったっけ、みたいなところもあったのだけど、もう最初のロメオのソロで、マチアスの美しすぎる脚にため息である。これぞヌレエフ。ルティレひとつでわかる。マチアス、ロメオを踊ってくれてありがとうー-(涙)

 

無邪気な若者らの戯れ、ジュリエットの出会い、バルコニーなど幸せそうな場面以上に響いたのが、”暗”の場面。ステファンティボルトとやむを得ず闘わなくてはならなくなるマチアスロメオ。そして殺してしまうマチアスロメオ。殺されるのはティボルトなのにマチアスロメオがかわいそうでならない。辛い。

 

ヌレエフ版って、マチアスが踊るとすんなり納得がいくのに、なんでそんなにばたばたするんだろう…ってなっちゃうことがある。簡単に言ってしまえば難しすぎるんだろうけど、踊れる人が踊るとそんな違和感全然ないんだよね。超難易度高い。厳しいね。マチアスの怪我が早く治って前みたいに踊れますように。心から祈ってる。

 

そしてミリアムである。マチアスにはミリアムである。素晴らしくてため息ばかり。この二人のように芸術性、技術、身長のバランスなどが見事に調和していて理想的なパートナーがいることの奇跡ね。お互いに。もちろん観客にとっても。

 

結婚を強いられるジュリエットの慟哭。これはもう、胸が痛くてたまらない。婚姻の衣装に無理矢理袖を通され紐が結ばれる、とてもわかりやすく象徴的だ。まさしく縛られるのだ。自分が若い頃に観た時よりも今の方がずっとジュリエットの気持ちがわかると思えるし、この『ロメオとジュリエット』という話自体がなんて酷い話なんだとより強く感じた。ミリアムジュリエットのおかげであり、自分自身が年齢と経験を重ねたことで変化した結果でもあるだろう。

 

私は映像だとなかなか集中して観られないのだけど(なのでよほどでない限り見ない)、映像だから気づくことというのもあって、これはこれでありがたい。生で何度も観ているはずなのに、とても新鮮に観た。マチアスとミリアムだしな!!食い入るように観ちゃうよ!!

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あとステファンの登場、かっこよすぎた。いやあ、ステキ。

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パリにいた頃、オペラ座に通い始めて初めてリピートしまくった作品が『ロメオとジュリエット』なのでそういう思い入れもあるんだけど、その後他のバージョンの『ロメオとジュリエット』もいくつか観ているけど、あらためてこのヌレエフ版のダークさは独特で、だけど終わり方には希望もあると思える。しかし私のおぼろげな記憶だと最後に両家両派閥の人々が一緒にぞろぞろ歩く場面があったような…それが和解の象徴だと思ってたんだけど。記憶に自信なし。

 

コロナ禍の上演だから立役はマスクをしていたりと時代を感じさせる。とにかく観客を入れて上演できてよかったし、マチアスとミリアムが踊れて、そしてそれを収録できて本当に良かったよね。ヌレエフ版のお手本ともなるだろうし。もちろん他のペアも観たいけどね。

 

ああ。とっても、劇場で観たい。


バレエ「ロメオとジュリエット」(全3幕)
振付:ルドルフ・ヌレエフ

ジュリエット:ミリアム・ウルド・ブラーム
ロメオ:マチアス・エイマン
ティボルト:ステファン・ビュリョン
マキューシオ:フランチェスコ・ムーラ
ベンヴォーリオ:マルク・モロー
ロザライン:オニール八菜

収録:2021年7月3・6日 パリ・オペラ座 バスチーユ

 

最後の最後でパリス役が間違って表記されてたのが残念。ヤニックではなくダニエル・ストークス。

ONPのサイトからキャスト:

Roméo :Mathias Heymann
Juliette :Myriam Ould-Braham
Mercutio :Francesco Mura
Tybalt :Stéphane Bullion
Benvolio :Marc Moreau
Rosaline :Hannah O'Neill
Pâris :Daniel Stokes
Lady Capulet :Fanny Gorse

 

こちらに舞台写真や動画などあり。

www.operadeparis.fr