アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

Une Saison (Très) Particulière(新章パリ・オペラ座 特別なシーズンの始まり)

何度涙をこらえたことか。

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オペラ座のダンサーたちがコロナ禍をどんな思いと共に過ごしてきたか。

これまで払ってきた多くの犠牲の上にある芸術そのものである身体。その美しさや儚さ、日々の努力とその肩にかかる責任。なんかもう、いろんな思いがぐるぐるしっぱなしだった。

 

劇場が閉鎖されレッスンもリハーサルもできなくなった期間がダンサーたちの身体だけでなく精神にも大きな影響を与えたことがよくわかる。

劇場でのレッスンが再開され嬉しくて楽しくてたまらないといった様子のダンサーたち。ほほえましい。しかし『ラ・バヤデール』のリハーサルとなると、プレッシャーが勝る。コール・ド・バレエにせよソリストにせよ、自分自身の心身と向き合うのと同時にお互いの視線の中、ディレクションの視線の中で受けるプレッシャー。

 

オペラ座がどんな風に『ラ・バヤデール』のような大きな作品の準備をしているのか、ダンサーたちがどんな雰囲気の中で日々過ごしているのか知ることができてとても興味深かった。毎日のクラスだけでもオペラ座のなら永遠に見ていられるけどね(笑)

 

ダンサーたちの語りも結構あってよかった。エトワールだけでなくコール・ド・バレエのダンサーたちの存在感もなかなかだった。いつも思うことだけど、ダンサーたちもちゃんと語るんだよね。踊りにセリフはないんだけど、語るための中身がちゃんとある。そして昨今はダンサー自身が喋るのを見る機会が増えたから、声で誰が喋ってるか結構わかったよ。(声だけで、誰が喋っているのか明示されない場面がわりと多かった)

 

『ラ・バヤデール』の指導で多く登場していたクロチルド・ヴァイエさんはこの後ナポリサンカルロ劇場に移ってしまったので、オペラ座は大丈夫なんだろうか!?と心配になってしまう。ヌレエフ作品の継承って、人から人へ、ダンサーからダンサーへと言葉や身振り手振りで継承されているもので、教科書があるわけではない。”人”そのものが知識の宝庫であって、経験を伝える重要な役目を負っている。その伝承の記録としてもとても興味深かった。(そしてボリショイと違いコール・ド・バレエの指導やアドバイスが心えぐる系でなくて見ている側としても本当によい)

 

劇場が閉鎖されてしまって観客をいれての公演ができなくなった『ラ・バヤデール』、オンライン中継で見ていたのでポール・マルクのエトワール任命も画面越しに立ち会ったのだけど、映画の中で、スタジオリハーサルで、初めて団員みんなの前でゴールデン・アイドルを踊った場面がとても印象的だった。その場にいるみんなが息をつめて彼の踊りに注目する。それだけでもう、彼がいかに特別だったかわかるよね。

 

アマンディーヌ、ユーゴが比較的多いのだけど、ミリアムとステファンのステージ・リハーサルの様子と、それを客席からチェックしている芸術監督のオレリーが2人をとても褒めていてジーーンとしてしまった。結局ステファンはこのソロルを踊ることなくオペラ座を引退してしまったわけで、あの場にしか存在しなかったあの美しさ、このあまりの儚さ切なさに単なる一ファンなのに胸が締め付けられる思い。。。

 

ところでオレリーの後任はいつ決まるんだろうか。もう決まってるんだろうか?

色々批判もあったようだけど、ダンサーたちを見る眼、外から呼ぶ振付家の選択など、結構よかったと思うんだけどねオレリー。やっぱりあのオレリーが見てるとダンサーの緊張感が違いそうだし(笑)

 

現地フランスではもうDVD発売になってて買おうかなってなっている。欲しい…何度でも見たい…しかもボーナス映像30分もあるらしい。

boutique.operadeparis.fr

 

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