ロイヤル来日公演、待ちに待った、サラ・ラムとスティーヴン・マックレー主演の『ロミオとジュリエット』。
ああ、もう、言葉を失う。
マクミラン版『ロミオとジュリエット』の、1つの理想形を観た。
2023年6月28日18時30分
ジュリエット:サラ・ラム
ロミオ:スティーヴン・マックレー
マキューシオ:ジェイムズ・ヘイ
ティボルト:ギャリー・エイヴィス
ベンヴォーリオ:カルヴィン・リチャードソン
パリス:ニコル・エドモンズ
英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演 「ロミオとジュリエット」 6月28日(水)のキャスト
とにかく私はサラの演じる女性像が好きだ。印象的だったのは『マノン』だが、古典を昔ながらのそのままに描くのではなく、現代に生きる私たちの物語として女性像が浮かび上がる。知的で、気品を感じさせ、ちゃんと”人間”である。
一幕のあどけなさの残る無邪気な少女ジュリエットを表現するとき、大げさに幼さを強調するのではなくて、なんて自然に見えるのかと驚く。腕のちょっとした使い方や角度で見え方が全然違う。そういった小さなひとつひとつを長年考え抜き積み重ねてきたのだろうな。あの透明感。私の子供時代にあんな透明感ある時があっただろうか!!!(きっとない)
私はジュリエットがパリスと初めて一緒に踊るあの曲あの振付が好きで、昔パリス役の平野さんとのリハーサル風景を動画で見たときにすっかり虜になってしまった。今回のサラの表現も本当に美しく見事で、オペラグラスを覗きながらうっとり。
これ。7年前だって。
サラとスティーヴンとのパートナーシップ、これを思うとじんわり泣いてしまう。この二人、どれだけの時間を共有してきたんだろう。リハーサルを重ね、本番の舞台を重ね、その間にはスティーヴンの大きな怪我と復帰もあり、人生経験もさまざまあったことだろう。そして今、辿り着いたこの境地。。。涙。
スティーヴンの全幕ものでの日本での復帰に立ち会えたこともうれしかった。本人とサラ、サポートチームにとってもひとつの”勝利”だったのではないか。あれほどのものを見せてくれてこれぞ至芸だなと思った。年齢と経験を重ね、ロミオと実年齢が離れていっても、だからこそできるあのロミオ。唸る。
2人のあまりの素晴らしいロミオとジュリエットっぷりに、細かなことを挙げるのは野暮な気がする。細かなところまでずっと記憶に残したいのに、矛盾しているようだけど、ここがいいあれがいいと言うのはなんか違う気がして。
サラジュリエットの2幕から3幕の心情表現もまた素晴らしい。1幕最後のバルコニーでのあまりの多幸感、そしてそこから、歯車が狂ってしまったかのような2幕から3幕へ向けて、ジュリエットという少女がどんな風に生きたかを舞台の上に残してる。表現というよりジュリエットそのものとなって、ジュリエットの人生を生きている。少し前までぬいぐるみを持って乳母と遊んでいた少女がロミオのためにする重大な決心。その強さと勇気に胸が震える。だからサラのジュリエットが好きなのだ。(泣)
なんてすごいものを観たんだろう。なんだったんだろう。あまりの感動に言葉を失う。どう感想を述べたらいいのかわからない。そんな舞台を生で観ることができて幸せ。心満たされた。
2日目マチネのヤスミン・ナグディとマシュー・ボールのペア。これはシネマ上映で見て大感動したペアである。ぜひ生で観たかった。
まず午前にクラスレッスンの見学があり、オルガ先生によるクラスはWBDなどで見てたやつだーって感じ。(笑)
今シーズンで引退のラウラが最初からポワントを履いていて、バーも客席からとてもよく見える場所を陣取っており、やる気を感じさせて素晴らしい。実際、バーでもラウラは踊っていて、まわりの若手と全然違った。なんなら倍くらいバレエ歴が違うはずで、あの円熟の境地に至るまで、まわりの若手たちはすごいお手本を間近に見ているのだな。
WBDの中継では最後までいることがほぼないワディムが最後まで張り切っていて、いちいちさすがの美しさだし、着地もちゃんと5番だし、見れてよかったー。プリンシパルは他にマヤラと金子ふみさん。
さてマチネ。
2023年6月29日13時30分
ジュリエット:ヤスミン・ナグディ
ロミオ:マシュー・ボール
マキューシオ:アクリ瑠嘉
ティボルト:平野亮一
ベンヴォーリオ:ジョセフ・シセンズ
パリス:デヴィッド・ドネリ―
英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演 「ロミオとジュリエット」 6月29日(木)マチネのキャスト
ある意味こちらが普通で、初日が例外的であったのだと確認できた。初日の記憶があまりに新しいので、ヤスミンには不利すぎた。ごめんね。マシューロミオはシネマの時に大発見!と思った役でありダンサーなので、スティーヴンとはまた別のロミオの姿として楽しめた。
全体的にヤスミンマシューペアはより身近な存在で、我々の日常に近く、立ち振舞いも含めて今後はこういう雰囲気になっていくのかなーとも思った。良い悪いではなく。マクミランだから他の古典に比べればいかにもクラシックバレエというマイムや立ち振舞いは少ないわけだが、ああそういう振舞いも許されるんだな、という許容範囲の広さというか。舞台上でより生身の人間でいられるというか。
私は特にマシューロミオの憂いと悲しみが好きなので、2幕でマキューシオを失い怒りを爆発させそこからの展開とか見どころ満載だった。まだ若いダンサーだからできる表現もあるし、それが強味にもなる。しかしそれだけでは満足できない自分もいる。
今回のロイヤル来日公演、発表当初は東京でロミジュリ7公演7キャストってマジかよ!!ってなったけど、ふたを開けてみれば完売だし、集客力すごい。完売しちゃってるからチケット追加したくなってもできないなーなんて思ってたけど杞憂だった。私にとっての『ロミオとジュリエット』は初日ですでに満足、完結していたのだ。それが2日目にわかった。心残りはない。
ギャリーさんら脇役のレベルが高いのがロイヤルの強みで、彼らは演劇としても成立してしまうクオリティ。物語の中の世界としてなんらかの違和感を感じた場合そこが気になって集中がそがれることがあるが、ロイヤルではそういうのないよね。さすがである。
監督はもちろんスタッフもごっそり来日していて、やっぱりカンパニーまるごとの引っ越し公演って厚みが違うなあと実感。あと、シネマやWBDで裏方まで顔が割れているというのは(笑)、ロイヤルのマーケティング戦略としてとても成功していると感じる。別世界の人たちというより、身近に感じられるもんね。集客にも影響していると思う。
ひとまずここまでで。また追記するかも。