アートなしには生きられない

バレエ、ダンス、クラシック音楽、美術館などシンガポール・東京でのアート体験を中心に。

The Lost King(ロスト・キング 500年越しの運命)

元気出た。実話に基づくストーリー。

 

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シェイクスピアの影響力というのは物凄いんだな。彼の描いたリチャード三世像が、歴史家や研究者ら専門家たちの”前提”を形作っていたといってもいいのではないか。

権威ある人々に軽んじられながらも自説を信じて行動したフィリッパ。そして定説を覆し、大発見をする。

 

こういうのを見ると、やはり均質性の高い組織や集団ではダメなんだなと痛感する。色々な背景や立場の人々が意見を持ち寄り、誰もがフラットな環境で言ったり聞いたりできる、その大切さ。

だってフィリッパが登場せず、あの人たちだけで歴史を語っていたら、今もリチャード三世はあの駐車場の下に埋もれたままだったんだよ。別の視点を持ち込む大切さよ。

 

それにしても正当に評価されないフィリッパの様子というのは、いかにも日常にある光景であり、これといった肩書を持たない個人(特に女性)は身に覚えがあるはず。

 

「若手にチャンスを与えよう」とフィリッパに言う上司は自分だって若くない。(けど自分の権力を譲る気は当然ない)

名誉ある歴史家や大学組織は無所属のアマチュアの意見を最初から下に見ているしフィリッパの”感”をバカにしている。(「これだから女は」という心の声が駄々洩れ)

 

しかしあの大学はあんな態度でよくもまあって感じだけど、フィリッパがその後女王からMBEを授与されたとあり少し救われた。(当時のフィリッパの苦しさが帳消しになるわけではないだろうが)

 

フィリッパがリチャード三世にどっぷりハマった理由というのは理屈じゃないのかもしれないよね。我々だって、そういうのあるわけで、それが時には人生を変えることもある。幸せだよね、そんな出会いがあるなんて。理屈抜きに、どうしても気になってしまう、どうしても止められない、みたいな。

 

別居してた夫や息子たちが応援してくれてよかったなーー。邪険にされて落ち込んでるフィリッパの支えになってくれて。

 

きっと歴史上、たくさんの”フィリッパ”がいるんだよな。こういう話、もっと知りたい。